?W.考察
A.ターミナルケアを実施するための施設の取り組みについて
8年度調査では死亡場所の35%が特養ホーム内であった。これは平成4年度の全国老人福祉施設協議会の実施した全国老人ホーム基礎調査の施設内死亡33.5%とほぼ一致する。施設内が死亡場所とは限らないが7割の施設が仏間や礼拝所を保有していた。入居者が仏間や礼拝所に出向くことで故人の死後も安らかな限りを願う儀式を日常生活の中に取り込むことができる。利用者にとって「自分の死後も、そのようにしてもらえる」と思えることは心の安定を図る上に重要なケアといえる。ターミナルケアに熱心な施設の寮母長の記述に「入居者の死は隠さない。死亡退所者とのお別れは職員と利用者が一緒に行なう」とあった。利用者の参加は自分が施設で看取られることを安心だと確信する機会の提供となる。これを死後の心配に対するターミナルケアの実践の一環であると考えると特養ホームのターミナルケアは人居時点から開始されているといえる。
終末期に家族や親族が付き添える個室を持たない施設が約5割あったがターミナルケアに家族の参加は重要であるため個室の充足に課題があるといえる。
施設長、看護職、寮母長の回答で利用者の「最期の過ごし方」の意志の確認は積極的には行なわれず家族の考えが優先される場合が多いことがわかった。どのような選択であろうと自分自身の選択でなければ高いQOLとは言えない。特養ホームの利用者は入居中に痴呆状態に陥ったり程度が進行したりすることが多いため入居時点で「最期をどのように過ごしたいか」という意志の確認は重要である。他県の特養ホームの中にはLMD(Let me decide:自分で決める自分の医療)に取り組み始めているところもある。日本尊厳死協会は設立から20年がたち8万近くの会員がいるが自分の望みを「終末期宣言書」として書くシステムを普及させようとしている。利用者のニーズや希望に沿うことが特養ホームのターミナルケアの出発点であると考えると、より効果的な意志の確認方法を見出すことは重要な課題である。
B.介護職との連携について
1.看護職の役割
看護職は普段から心身の状態の観察や苦痛の緩和など利用者の健康管理に重点がおかれ利用者や家族と、もっとコミュニケーションをとりたいが、その機会がなかなか持てない葛藤があることがわかった。平成4年度の看護協会調査研究報告書(以下、報告書)によると特養ホームの看護職の業務で最も時間を割いている業務は日常の医療処置や健康状態の把握で看護職は利用者との会話や末期の世話に時間をかけることを望んでいるという。8年度調査も、この報