と柳田らの報告したそれぞれの頻度は,約28%5)と38.4%8)であり4〜5倍以上の大幅な開きが存在する。これには,さまざまな要因が関与していると考えられる。以下に具体例を挙げ説明したい。
1.第一線の医療現場の医師数の不足
へき地においては,少ない医師数で多くの日常業務をこなしており,丁寧にやりたいと思っていても,検死・検案に充分な時間を割くことは困難である。
2.卒後の法医学の研修不足
アンケート調査で明らかなように,法医学における基礎的事項だけでなく,死体の経時変化の所見などの検死・検案業務に不可欠とされている知識が不足しており,自信を持って解剖を勧められない。
3.一般住民の解剖に対する理解不足
4.検死・検案業務に対する行政の理解不足
予算面(時間外検案の手当などの問題)だけでなく,検死・検案業務が増えても医師の増員は,まず認められない。
B.上記の問題点の対策としては,
1.第一線の医療現場の医師数の不足に対しては,医師の増員はすぐには,見込めないので当面は,近くの開業医などと日頃より連携を保つようにする。
2.卒後の法医学の研修不足の問題に対しては,次のような対策が望まれる。
検案.検死業務には,臨床の知識が必要と考えられるので,初期臨床研修修了以降に法医学研修の機会を設けることが効果的と思われる。へき地等の第一線医療現場には,内科医が最も多く従事していると考えられるので,例えば内科学会主催の生涯教育講座に検死・検案の講習を定期的に組んでいただければ,検死・検案に関する基礎的知識の普及が期待できる。
3.全国的に監察医制度を拡げてゆくことは,現実的には困難と考えられる。上記2.の対策を推進することにより,第一線医療現場の医師に正確な検死・検案を行ってもらい,その上で解剖となった例については,各大学の法医学教室が対応する。勿論,警察を含めた行政当局も協調していくことが不可欠である。一般住民の解剖に対する理解不足の解消については,啓蒙活動も無論必要であるが,学会(法医学,内科学など),行政,第一線医療現場の医師がお互いに