2)解剖可能施設までの到達時間(表10参照)
表10に解剖可能施設までの到達時間が示してある。2時間未満が約75%と一見すぐ行けそうであるが,往復を考えると実際は2倍の時間を要する。そして,離島,山間僻地などでは天候により交通が麻痺する場合も充分あり得る。片道6時間以上の地域(往復半日以上)では,たとえ主治医として解剖の承諾が得られる可能性があっても,家族に対して解剖に対する説明が困難となることも予測される。
3)行政解剖に対する予算措置の必要性(図14参照)
アンケート調査票には,さらに「行政解剖の予算措置が取られているのであれば,解剖をより積極的に勧めますか。」という項目も設けた。図14には,この設問に対する回答の集計結果が示されている。「No」が57%と少し多かったが,実際上,行政解剖(承諾解剖)を普及させていくには,1),2)に示した一般住民意識の改革と解剖可能施設までの到達時間の短縮が重要な要素だと思われる。
3.検死・検案に困った例について
1)病死及び自然死と考えられるが,死因が確定できない場合の対応
「医療機関への通院歴,家族の話,警察の捜査などを参考にしても死因ははっきりしないが病死及び自然死と考えられる場合どうするのか?」という設問に対する集計結果をまとめたものが図15である。「警察と協議し,できるだけ検案のみで死亡原因を推定するようにしている。」という回答が最も多く,64%を占めている。次は,「不明であれば警察に対して法医解剖を勧めている。」という回答が26.8%である。
2)老健施設における不明死の検案と死因判定(表11参照)
特別養護老人ホームなどの老健施設からの検案依頼は,6%と少なく,検案時に死因の判定に困った例は461作中17件と少数であった。
3)自分が一度も診療していない場合の在宅での検案(表12参照)
自分が一度も診療していない場合の在宅での検案の経験者は,55.3%と過半数をしめている。東京都監察医務院が自宅にて検案した病死者数は2586人であり, これは全検案の29.4%となる5)。今回得られたデータをみると,同割合は東京都監察医務院の約2倍にあたる。さらに,死因の判定に困った例は,