1.過去5年間における検死.検案時の死因の内訳(図7参照)
集計方法は,過去5年間における現在の勤務先の検死・検案例と医師個人が過去5年間に経験した検死・検案例の両者を加算し,重複していると考えられるものは除外した。図7に示すように,過去5年間の検死・検案総数は1951件あり,その内,病死及び自然死とされたケースは1041件で,全体の53.4%に当たる。不慮の外因死は,910件あり,全体の46.6%を占めている。このデータを監察医制度を実施している東京23区,大阪市,神戸市(西区.北区を除く)の調査統計5)と比べてみると,病死及び自然死であった割合は,それぞれ68.7%(6002件/8770件),69.3%(2056件/2965件),61.4%(584件/951件)となり,いずれも6割を越えており,今回の集計結果とは明らかに異っていた。その理由としては,今回の調査がへき地を主たる対象としているのに対し,監察医制度を実施しているのはいずれも大都会であり,疾病構造,外因死の原因構成に違いがあるのかもしれない。
2.病死・自然死の死因の分析
病死・自然死の内訳を表3に示した。循環器系疾患が50.3%と一番多く,次いで脳神経系疾患の29.2%,呼吸器系疾患の8.9%,消化器系疾患5.1%の順となっている。監察医制度を実施している東京23区,大阪市,神戸市(西区・北区を除く)の調査統計との比較は後ほど詳しく述べることとする。病死.自然死の死因のうち突然死をきたす可能性があるのは,循環器系疾患,脳神経系疾患,呼吸器系疾患,消化器系疾患(特に,肝不全.消化管出血など)と考えられる3)ので,これらを中心とした分析結果を以下に示す(なお,図7と表3で病死.自然死件数に差が108件あるのは,表3の作成に用いたアンケート項目に記載もれがあったためである。)。
1)循環器系疾患の分析(表4参照)
病死.自然死に占める循環器系疾患の割合は,先の東京23区,大阪市,神戸市(西区.北区を除く)の調査統計によれば,それぞれ50.5%(3691件/6002件),56.2%(1153件/2056件),57.1%(333件/584件)となっており5),東京23区とはほぼ同じ比率となっているが,大阪市,神戸市(西区・北区を除く)より小さい値となった。表4には,循環器系疾患の内訳が示してある。循環器系疾患のうち虚血性心疾患が73.2%を占め一番多く,次いで,いわゆる心不全が21.4%,大動脈瘤破裂が0.6%となっている。これらのデータを高津らの突然死剖検例死因別分布と比べてみると際だった差が見られる3)。彼らのデータによると,循環器系疾患のなかで虚血性心疾患が55.8%,心筋炎が11.5%,大動脈瘤破裂が6.4%占めている。大動脈瘤破裂については,マク