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まず,今回アンケート調査の回答を寄せてくれた自治医科大学卒業医師の勤務状況などの背景を調べた。表1には,現在勤務している地域の人口別の分布状況を示してある。2万人未満の地域が約60%を占めている。1000人に満たない過疎地も約9%に認められる。約17%を占める10万以上地域は,おそらく初期・後期臨床研修を行う中.大規模病院が位置していると考えられる。

図1には,勤務医療施設における病床数が示してある。無床診療所が全体の約3分の1を占め,19床以下の有床診療所を含めると40%以上となる。約5分の1に当る20〜99床の病院は,いわゆるへき地中核病院と推定される。一方,500床以上の病院は,初期.後期臨床研修病院と考えられる。図2には,勤務医療施設の医師数を示す。医師数が1人あるいは2〜9人の施設は,それぞれ32%あり,両者を併せると60%以上となっている。1人ないし2人医師勤務体制は,図1の無床診療所に当り,一方,2〜9人の医師数を有する施設はへき地中核病院に相当すると推測される。50人以上の勤務医師を擁している施設は,図1の500床以上の病院と思われる。

勤務医師の診療科目一覧を表2に示す。内科は,6割以上と多数を占めている。へき地等の第一線医療地域においては,行政(町・村)の財政状態は逼迫しており,余裕を持った医師数を確保することは困難である。したがって,へき地医療においては,どうしても内科中心とならざるを得ず,内科医が小外科的処置をはじめ,眼科,耳鼻科などの初期対応も行っているというのが現状である。こういった状況下にあるため,初期・後期臨床研修は内科中心となり,表2のような結果になったと思われる。産婦人科,小児科,耳鼻科,眼科や外科の中の脳外科,胸部外科,消化器外科などの専門科には,おそらく義務年限明けの卒業生が従事していると考えられる。

以上のアンケート調査結果をまとめると,へき地等の第一線医療は,0〜19床の診療所と,100床未満の病院が中心となって,しかも少ない医師数で支えられている。さらに,地域医療の背景を考えると,いわゆる治療・診断医学だけではなく,予防活動,終末.在宅医療,保健.健診業務なども併せて担っていかなければならず,医師1人当りの負担はかなり重いと思われる。

 

B.検死.検案業務体制

 

突然死を含む異状死体は,全例解剖することが原則であり理想であると考えられるが,現状としては警察,医師(監察医も含む)による検死・検案の結果,死因が明白で犯罪性がない死体に関しては,解剖は行わず死体検案書を発行している。犯罪性が疑われる場合には,裁判所の鑑定処分許可状に基づき司法解剖が行われる。司法解剖においては,遺族の承諾は必要とされない。一方,犯

 

 

 

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