寿命の著しい延長が達成されてきた。それと同時に,一般社会への医学知識の普及も進み,患者とその家族への病気に対する詳細な説明だけでなく,死亡した場合,その死因についての因果関係を明確にすることも要求されるようになってきている。このような国民意識の変化に伴い,突然死を含めた異状死体における正確な死因を把握することは,必要不可欠となっている。このことを推進していくためには,へき地医療における突然死を含めた異状死体の取扱いの現状を知り,そして,それを分析してゆくことが不可欠と考えられる。今回,我々は,へき地等の第一線医療における検死・検案の施行状況を調査し,突然死の発生状況,背景因子などを明らかにするとともに,検死・検案・解剖業務に代表される法医学の地域医療における役割りと,第一線医療従事医師との連携のあり方などについても考察を加え報告する。
?U. 調査方法及び対象
調査対象は自治医科大学卒業医師とした。自治医科大学は,深刻な医師不足に悩むへき地等における医療の確保と向上及び住民の福祉の増進を図るため,昭和47年,全国の都道府県が共同して設立した大学である。自治医科大学卒業医師は,在学年数の1.5倍すなわち9年間を義務年限として,出身県知事の指定する公立病院等(半分の4.5年はへき地等の公立病院等)に勤務することになっている。平成9年度現在までの入学生総数は26期生までの2732名,卒業生は20期生までの2081名となっている。このうち11期生までの1048名が,いわゆる義務年限修了者である。
全卒業医師のうち,初期・後期研修などを除いた1621名の約半数に当たる753名が,離島,山村・過疎・豪雪地区などのへき地医療機関に勤務し,その地区における予防・治療医学を実践するとともに,終末・在宅医療,保健・健診業務なども担っている。さらに,753名以外のほとんどの卒業医師も,へき地医療機関に勤務した経験を有している。このような自治医科大学卒業医師の現状を考慮すると,今回のへき地医療における突然死を含めた異状死体の取り扱いを知るための検死.検案の施行状況の調査対象として適していると考えられる。調査方法は,別紙1に提示してあるアンケート調査票を全卒業生2081名に郵送し,回答の得られた518名分について各種の解析を行った。なお,アンケート各項目ごとに無回答,不適切なものは削除した。
?V. 集計・分析結果
A.対象の背景