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[V]へき地医療における突然死の発生状況ならびに背景因子に関する研究

 

梶井英治 自治医科大学法医学・人類遺伝学

岩本禎彦 自治医科大学法医学・人類遺伝学

河野正樹 自治医科大学救急医学(兼)法医学・人類遺伝学

奥田 浩 自治医科大学法医学・人類遺伝学

武富 章 福岡県方城町立医療センター

津戸直樹 栃木県菅間病院

 

I.はじめに

 

突然死は,[突然の思いがけない自然死(Sudden unexpected natural death)]と定義されている1)。突然死に至る時間としては,瞬間,1時間,6時間,24時間などが提唱1)2)3)されている。心臓疾患による突然死は,1時間以内が大半を占めるのに対し,24時間以内においては脳血管系疾患による割合が多くなることが知られている1)。したがって,突然死の病因や頻度について分析する時は,時間的な定義を明らかにする必要がある。現在では,国際心臓学会およびWHOによる“24時間以内”がよく用いられている。厚生省研究班「突然死の調査研究」によると4),突然死の頻度は国民の数%から10数%であると推定されており,年間死亡数を75万人とすると毎年7〜8万人が突然死していると考えられる。先に述べた突然死の定義に従えば,自殺,溺水,転落.転倒などによる不慮の外因死や犯罪による死亡は除外されなければならない。しかしながら,突然死は,いつ,どこでも発生するため死体で発見されることが多く,この場合は検死・検案が行われる。
外表観察主体の検死・検案のみでは,不慮の外因死との鑑別に苦慮する例がみられるだけでなく,隠れている犯罪を見逃すこともあり得る。これらのことを防ぐためには,検死・検案だけでなく法医解剖(行政.司法解剖)を積極的に行っていく必要があると考えられる。法医解剖を行う各大学医学部法医学教室は都市部に集中し,監察医制度が完備され検死.検案.行政解剖が組織的に行われているのは,東京,大阪などの大都市に限られており,へき地における突然死を含めた異状死体(犯罪性の有無にかかわらず,すべての外因死,死因が不明な死体,発症や死亡前後の状況に異状のある死体,もしくは内因性疾患による死亡以外のすべての死体)の実際的な取り扱いは,一般臨床医が日常業務の合間に検死・検案を行い,死因を推定しているのが現状であろうと考えられる。さらに,最近の臨床医学においては,医療技術の進歩により新しい治療法が開発され,その結果,平均

 

 

 

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