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4.血清抗ds-DNA抗体価の低下

FTY720とセラミド(1mg/kg)投与群ではステロイド投与群には若干劣るものの経時的に血清抗ds-DNA抗体価の低下が認められた。

 

IV.考察

 

今回の実験でセラミドとFTY720は4ヶ月齢lprマウスのDNT細胞にアポトーシスを誘導し、リンパ節の縮小、T細胞機能の正常化、抗ds-DNA抗体価を低下させ、生存率を増加させることが明らかとなった。

近年、セラミドはアポトーシス伝達分子としての役割を担っていることが明らかにされてきた。特にTNF-αやFasのシグナル伝達系においてセラミドの関与が報告されている。セラミドによるアポトーシス誘導の詳細なメカニズムは未だ明らかではないが、現在までの実験系はほとんどがin vitroでのものであり、in vivroでのアポトーシス誘導作用を検討したのは我々独自のものである。加齢や自己免疫疾患とアポトーシスとの関連性に関する研究はここ数年来、急速に進展している。

アポトーシスの抑制、異常は中枢性または末梢性の自己反応性T細胞のdeletionに障害を来し、自己免疫疾患の発症につながることが推定されている。代表的例として、Fas-LまたはFas遺伝子の異常の結果、慢性関節リウマチや全身性エリテマトーデス様症状を呈するMRL-gld/Bldまたはlpr/lprマウスやアポトーシス抑制分子の一つであるBcl-2のトランスジェニックマウスなどが挙げられる。特にlprマウスではFasの異常の結果、シグナル伝達物質であるセラミドが低下していることが予想される。そこで生理的活性物質であるセラミドをlprマウスに補充することにより、アポトーシス抵抗性を解除し、治療薬としての可能性を検討した。現在、自己免疫疾患の治療薬として広く使用されているステロイド剤にはリンパ球に対してアポトーシス誘導作用を有する事実から、ステロイド剤と作用機序の異なるアポトーシス誘導物質は新しい治療薬として期待できるものと思われる。

セラミドは細胞外から受容体を介して作用するのではなく、また細胞膜を透過しにくいことから、我々は細胞膜透過性の合成セラミドを用いた。投与経路として、最初は腹腔内投与を行ったが効果がなく、オリーブ油を溶媒として経口投与したところ効果が認められた。投与実験では1mg/kg群が10mg/kg群よりも非投与群と較べて有意な効果を示した。セラミドには強力なアポトーシス誘導作用があることから、therapeutical rangeが狭いことが推定される。また油性製剤であるため、消化管の吸収のばらつきが多いことも考えられ、今後はマイクロエマルジョン法

 

 

 

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