H.研究実施方法
A.in vitroでの解析
1、マウス: 5-6週齢と20-24カ月齢正常BALB/cマウスおよび5-6週齢と10.12カ月齢の自己免疫発症モデルMRL.lpr/lprマウスを若齢、加齢群として用いた。 2、in vitroでのセラミドの抗原刺激下T細胞増殖能とT細胞アポトーシスに及ぼす影響:10%FCS添加RPMI1640培養液に懸濁した脾臓細胞またはリンパ節細胞に脂肪酸部分がアセチル酸である合成された細胞膜透過性セラミド(C2-Ceramide)またはFT720を加え、固相化抗CD3抗体刺激に対する増殖反応は3H-thymidineの取り込みで、Activation-induced cell death(AICD)については、DNA Ladder検出とFITC標識抗体とPIまたはMerocyanine540との二重染色施行後FACScanで解析した。
B.in vivroでの解析
既に自己免疫病を発症している各群15匹のlprマウスに生後4ヶ月齢からセラミド(l mg/kg,10mg/kg),FTY720(lmg/kg),メチルプレドニン(lmg/kg)を週3回継続経口投与した。効果判定は、生存率と、脾臓、リンパ節のCD3+CD- CD8-(double negative:DN)T細胞の比率と抗CD3抗体またはCon A刺激増殖能とIL-2産生能と、さらに血清抗ds-DNA抗体価とで行った。
?V. 結果
A.in vitroでのセラミドとFTY720との正常BALB/cマウスリンパ造血系臓器に対するアポトーシス誘導能(図1)
胸腺細胞に対しては、ステロイド剤には劣るものの、セラミドとHFY720とは明らかにアポトーシス誘導作用を示した。一方、脾臓細胞ではステロイド剤が強いアポトーシス誘導能を有するのに対して、セラミドとFTY720では有意なアポトーシス誘導能は観察されなかった。骨髄細胞に対しては、逆にセラミドとFTY720とはステロイド剤よりも強いアポトーシス誘導作用が認められた。尚、薬剤は全て10mMと低濃度を添加して行った。以上からセラミドは胸腺と骨髄細胞に対してアポトーシス誘導能を有し、その様式はFTY720に類似しており、ステロイド剤とは異なることが明らかとなった。図にスフィンゴ脂質の代謝経路を示したが、セラミドの産生経路の最初のステップであるセリンパルミトイルトランスフェラーゼの特異的代謝阻害剤であるISP-?Tから合成されたFTY720は化学構造的にセラミドに類似している。従ってそのアポトーシス誘導作用の機序として、スフィンゴミエリン回路を介することが予想される。