第1部 へき地医療の実態調査と好発疾患の発生機序に関する研究
[?T]へき地における冠動脈疾患患者の内皮型NO合成酵素遺伝子多型の解析
大川藤夫 栃木県那須南病院
前田喜一 自治医科大学循環器内科 大学院
江畑均 茨城県西総合病院
池田宇一 自治医科大学循環器内科学
島田和幸 自治医科大学循環器内科学
?T は じ め に
一酸化窒素(NO)は,血管内皮細胞由来の血管弛緩因子として血管張力を調節しているのみならず,神経伝達物質や免疫調節物質としての役割を持ち,精力的に研究されている。NOはL-アルギニンを基質としNO合成酵素(NOS)の働きにより合成される。NOSにはカルシウム依存性の構成型NOSとカルシウム非依存性で,サイトカインなどにより誘導される誘導型NOSの存在が知られているが,いずれの経路でも産生されるNOは,血小板凝集抑制,血管平滑筋増殖抑制,白血球の凝集抑制作用をもつと考えられ,動脈硬化の発症進展に重要な役割を持っている。
ヒト内皮型NOS(ecNOS)は,そのcDNAの全長は約4.1kbに及び,1203個のアミノ酸よりなる酵素で,その遺伝子は第7染色体上に存在し,26個のexonからなる。このecNOS遺伝子上にも幾つかの遺伝子配列の繰り返しが報告され,循環器疾患との関連も幾つか検討されている。13番目のintronや18番目のintronと本態性高血圧症は関連がないと報告されているが,最近,WangらはecNOS遺伝子の第4intron内の27bpの繰り返し配列の遺伝子多型が冠動脈疾患(CAD)と関連していることを報告した。これは,CADの病態形成にecNOS遺伝子の遺伝的多様性が関連していることを示唆するものと思われる。
一方,アンジオテンシン変換酵素(ACE)は血管収縮物質であるアンジオテンシン?Uの産生や,血管弛緩物質ブラジキニンの分解を調節する重要な酵素であり,同様に,血管の張力や血管平滑筋の増殖に対して重要な役割を果たしていると考えられる。ACE遺伝子多型については,CAD,左心肥大,脳血管障害などとの関連は我々の報告をはじめ既に多くの報告がある。また,アンジオテンシン?UがNO産生を調節しているとの報告もあるが,CADの病態にceN OS及びACE遺伝子多型がどのように関係しているかの報告はない。そこで今回の研究の目的は,日本人におけるCADとecNOS遺伝子多型との関連および