きる連邦所得税は、州・地方政府が節約できる利払いよりもさらに大きい。したがって、地方政府が得る利払いの節約分と、連邦政府の減収分の差額は、地方債を買った高所得者が手にすることになる。
3)連邦所得税改革が地方債に与えた影響
連邦政府の所得税率の変化は、非課税債券の市場における投資家の資金供給と、州・地方政府の資金需要の双方に大きな影響を及ぼした。債券の需要と供給に影響を及ぼすことにより、租税政策は州・地方政府の地方債の利子率にも大きく影響を与える。
投資としての非課税債券の魅力を決めるのは、課税債券と非課税債券の利回りの乖離率に対する投資家の限界所得税率の大きさである。したがって、一定の利回りの差について、限界所得税率が下がると、非課税債券の投資家にとって、以前は魅力的な金融資産であった地方債があまり魅力的な資産ではなくなるであろう。限界所得税率が下がったときに、非課税債券の投資家を債券市場に引き止めておくには、地方債の利回りは相対的に高くなければならない。すなわち、課税債券と非課税債券の利回りの差は小さくなる。
80年代にアメリカでは所得税改革が2回行なわれた。81年の改革では、連邦所得税の限界所得税率が全体的に3年間引き下げられた。さらに重要なことは、非課税債券は高所得者層の個人投資家が購入しているが、もっとも高い限界所得税率が70%から50%に下がったことだ。86年の所得税改革法では、限界所得税率15%と28%がそのままだったが、その他の所得層では限界税率が引き下げられた。また、以前は46%であった法人税率が34%に引き下げられた。このような、限界所得税率の低下により、非課税債券は金融商品としてあまり魅力的ではなくなったので、債券市場における資金供給は減少した。しかし、93年に連邦所得税の最高限界所得税率は、39.6%に引き上げられ、法人税も35%に引き上げられた。これらの措置により、非課税債券はふたたび魅力ある金融商品となった。
注1l Fisher[1996]251-263ページ。