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ボンドである。60年代から州・地方政府の資金調達のあり方がかなり変化し、GOに比べてレベニューボンドの重要度が増してきた。

州・地方政府の債券によって得られる利子所得については、連邦政府の所得税および法人税が免除される。非課税措置のおもな経済的効果として、州・地方政府の債券は、課税される他の債券に比べ低い金利で借り入れることができる。

ある投資家にとって、課税債券の利子所得と非課税債券の利子所得を同じにする限界所得税率は、課税債券の利子率から非課税債券の利子率を引いたものを、課税債券の利子率で割った割合(訳者注:以下では利回りの乖離率とよぶ)に等しい7。したがって、州・地方政府の地方債を購入するのは、限界所得税率が比較的に高く、少なくとも利回りの乖離率よりも限界所得税率が高い人々と推測できる。銀行が購入する非課税の地方債が減少したこと、利子率の変化、非課税の投資信託がバラエティーに富んでいることなどの理由から、いまでは州・地方政府の地方債のおもな保有者は個人投資家である。

州・地方政府の地方債の利子所得を非課税にして、州・地方政府の借入れの費用を補助するという方法は非効率である。なぜなら、州・地方政府が節約できる利子費用1ドルに対して、連邦政府は1ドルより多くを税収の減少という形で負担するからだ。

 

注6 Fisher,State and Local Public Finance, Chapter 10,Borrowing and Debt,pp.265-66,1996.

 

注7 訳者注: r; 所得税控除のない債券の利子率、 s; 所得税控除のある債券の利子率、 t; 投資家にとって、所得税控除のない債券と所得税控除のある債券が無差別になるときの限界所得税率、とする。このときt・r=r-sの関係が成立する。つまり、所得税控除のない債券から得られる利子所得にかかる所得税は、所得税控除のない債券の利子率と所得税控除のある債券の利子率の差に等しい。これを書き直すと本文が説明するように、 t=(r-s)/rとなる。左辺が正の値をとる限り、右辺も正の値をとり、r>sの関係が成立する。

 

(2) 地方債による資金調達の現状8

 

1)州・地方政府の地方債の規模

1991年において、州・地方政府は、総額9,160億ドルの債務を抱えているが、これはアメリカ合衆国の国民1人当たり約3,600ドルの債務にあたる。過去30年間に州・地方政府の地方債は増加を続けてきたが、経済全体としてみると、国内総生産の13%から16%のシェアで安定している。

 

2)州・地方政府が地方債を発行する理由

連邦政府と異なり、州憲法あるいは州法は、しばしば州・地方政府が行政経費の欠損を地方債によってまかなうことを禁止している。州・地方政府が借入れを行なう最大の理由は、投資的経費をまかなうためである。91年には州・地方政府は資本財に1,310億ドルを支出したが、これは1人当たり522ドルにのぼる。これを投資先でみると、32%が道路建設、23.7%が教育施設、14.5%が上下水道、8.3%が電気、天然ガス、公共交通などの公益事業である。

これら投資的経費をまかなうには二つの方法がある。一つは、税収を積み立てて行なう方法(pay-as-you-go)であり、もう一つは資金を借り入れて将来の税収から利子と元金を償還する方法(pay-as‐you-use)である。

後者の方法については、もし個々の投票者が将来的にコストを負担することがないようなプロジェクトを支持すれば、地方政府に過剰投資のインセンティブを与えてしまうとして批判されている9

 

 

 

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