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連結し、ネットワークとしての効果を増大させる可能性もある。第6節では、民間部門からの資金調達方法としてアメリカの州・地方政府が運用しているレベニューボンド制度を解説する。

第5節をまとめると、地方分権化の目的はできるだけ受益と税負担を一致させ、国民全体の満足度を高めることにある。その目的を達成するには、地方公共団体が競争的に行政サービスを供給できるようにするための財政制度の改革が必要とされる。地方公共団体をとりまく財政的な環境設定が整えば、地域戦略としての観点から社会資本整備が行なわれ、地方税収の増加によって財政格差を是正しようとするインセンティブも生まれると期待できる。

 

6. 社会資本整備のための財源調達―レベニューボンド制度の解説

 

本節では、Fisher[1996]のState and Local Public Finance, Chapter10 Borrowing and Debt,Irwin.(『州および地方政府の財政理論』第10章「借入れと負債」)を抄訳し、アメリカの州政府やより規模の小さい地方政府が、社会資本整備のための財源調達の手段として運用しているレベニューボンド制度を解説する。

レベニューボンド制度は、連邦財政制度のフレームワークのなかで機能している民間部門からの資金調達方法である。金融市場の成熟度という点で、アメリカに大きく遅れをとっているわが国にこの制度をそのまま導入してもその効果は期待できない。しかし、現在、急速にすすんでいる金融制度改革が浸透すれば、政策担当者ではなく金融市場が公債のマーケットリスクを評価する時代がいずれ訪れるものと考えられる。そのときに、国や地方が運営している公企業のなかで金融市場で資金調達できるものは、公営企業会計にもとづいて会計処理され採算性が客観的に評価できる事業であろう。今後、公共部門から民間部門への資金の配分を促す必要があること、ならびに公企業の採算性と経営効率を金融市場を通して評価する手段として、レベニューボンド制度の部分的な導入を検討する余地があろう。

 

(1) 要約6

 

州政府、およびそれより小さい規模の地方政府(訳:以下では州・地方政府とよぶ)は、おもに3つの理由で起債している。すなわち、学校、道路、上・下水道、発電所などの投資的プロジェクトの資金を調達するため、個人や企業による資本投資を補助するため、および短期的な行政サービスの運営費や特定の事業のキャッシュフローをまかなうため、である。1991年において、州・地方政府は、総額9,160億ドルの債務を抱えている。これは、アメリカ合衆国の国民1人当たり約3,600ドルの債務に相当する。

州・地方政府は、債券を売って資金を借りている。長期にわたる州・地方政府の債券には、GO(General Obligation bonds:GO bonds)とよばれる債券と、レベニューボンドとよばれる債券がある。GOは、それを起債した地方政府が額面の償還を保証した債券である。これに対して、レベニューボンドでは、ある特定の事業からの収益から投資家への元利償還が行なわれる。1991年において、州・地方政府の地方債のうち29%あまりがGOであるのに対して、68%がさまざまなタイプのレベニュー

 

 

 

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