4. 地方公営企業としての港湾事業の経営問題
(1) 港湾の会計制度のしくみ
わが国では、港湾は地域経済の振興や物流、貿易を支える重要なインフラストラクチャーとしての役割を担ってきた。そのため、港湾会計のしくみについても、港湾の建設や管理・運営などの事業における採算性を重視するだけでなく、国や地方公共団体からの補助金や負担金によって地域経済の振興や物流、貿易の振興に役立てることができるように制度的な条件が整えられている。
港湾管理者の財政は、歳入と歳出に分かれている。歳入の内容は港湾収入(入港料、施設使用料、役務利用料、水域占有料など)、および港湾工事の財源となる国庫補助金等からなる。歳出は、港湾の管理運営に要する費用、港湾施設の建設または改良に要する費用、公債償還費などである。これら歳出を歳入でまかない、歳入が不足する場合には地方公共団体の一般財源の繰入れや地方債によって補填される。
以下では、歳入のおもな項目である港湾整備の財源と港湾収入について解説する。
1)港湾建設の財源
港湾建設の財源については、以下の要因を考える必要がある。
・整備の対象となる施設
・利用の形態(公共使用、専用使用)
・建設方式(一般公共事業方式、受益者負担方式)
・建設の主体(国、港湾管理者、民間企業)
・費用の負担者とその負担割合(国、港湾管理者、民間企業)
・費用の負担方法(国からの補助金、港湾管理者の一般財源、地方債、負担金、貸付金など)
図表8-10(177ページ)では、現行の港湾建設の財源について要因別に整理している。
ここでは、喜多[1978]に従って、整備方式を一般公共事業方式と受益者負担方式の2つに分けて、概観する3。
注3 喜多[1987]226ぺージにもとづく。なお、港湾における民活事業については、86年に制定された「民間事業者の能力の活用による特定施設の整備の促進に関する臨時措置法」、および「民間都市開発の推進に関する特別措置法」にもとづいてインセンティブ補助、日本開発銀行からの融資や税制の優遇などが行なわれている。
?@一般公共事業方式
一般公共事業方式については、事業主体が港湾管理者の場合には補助事業とよび、国と港湾管理者との協議が調った場合に運輸大臣が行なうものを直轄事業とよぶ。事業費の負担方法は、国(国庫負担金あるいは補助金)と港湾管理者(港湾収入、一般財源、公債など)による負担に分かれている。国庫負担率については、図表8-1(165ページ)のとおりである。北海道、離島、奄美、沖縄をのぞき、各施設に対する国庫補助は、特定重要港湾(外国貿易上とくに重要な港湾)、重要港湾(国の利害に重要な関係をもつ港湾)、地方港湾の順番で補助率が高い。
?A受益者負担方式
港湾の場合は、他の交通施設と比べ施設の利用者や受益者が特定しやすい。そのため、図表8-10(177ページ)のように、施設によっては民間企業による受益者負担方式をとって港湾整備を行なってきた。以下では、図表8-10の「整備方式」にあげられた事業を要約する。