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a.産業関連事業

根拠法は1952年制定の「企業合理化促進法」であり、企業の合理化のために必要な港湾施設の建設や改良について、企業にその費用の一部を負担させ整備を促進することを目的とする。産業関連事業については、企業の申請にもとづいて港湾管理者が企業から受益者負担金を徴収して施設を整備し、国は港湾法にもとづいて負担または補助を行なう。

b.特定港湾施設工事

根拠法は59年に制定された「特定港湾施設整備特別措置法」であり、輸出関係の港湾施設、石炭・石油・鉄鋼関係などの工業生産に関わる港湾施設のなかでも、とくに緊急に整備する必要のあるものを特定港湾施設工事とした。図表8-10によれば、物資別専用埠頭(特定の貨物を大量に扱う専用埠頭)の整備が特定港湾施設工事とされている。なお、これら専用埠頭では一般の公共用埠頭に比べて効率的な荷役が行なわれるため、受益者から特別利用料が徴収されている。

c.外貿埠頭公社による港湾整備

67年当時、外国貿易におけるコンテナリゼーションの急速な進展や定期航路の増加にともなって、コンテナ専用埠頭や外貿定期船埠頭の整備が必要とされた。そこで、京浜外貿埠頭公団と阪神外貿埠頭公団が設立され、コンテナ専用埠頭や外貿定期船埠頭の整備が促された。81年には、これら公団は関係港湾管理者が設立した埠頭公社(財団法人)に変更され現在に至る。事業資金は、国と関係地方公共団体の出資金、財政投融資、借入金であり、整備した埠頭を船社にリースして賃貸料で建設費の償還を行なっている。

d.埠頭整備資金貸付金事業

70年より、民間事業者にとって適切な規模のコンテナ埠頭について、埠頭公団とは別に国の無利子貸付制度と民間資金の活用により整備が行なわれた。また、71年より、中距離フェリー埠頭を緊急に整備する必要から、埠頭整備資金貸付金事業にフェリー埠頭も加えられた。中距離フェリーの主要な発着港にはフェリー埠頭公社(公益法人)が設立された。

 

2)港湾収入

港湾法は、岸壁、上屋、荷役機械、引船などの港湾施設の利用の程度が測りやすいものについて料金を徴収しうる(港湾法第44条第1項)としている。しかし、港湾施設のなかには、港湾法により料金の徴収が禁止されている施設や、料金徴収が事実上むずかしい施設が多数ある。具体的には、水域施設(航路、船だまり)や外郭施設(防波堤、護岸など)等の利用の程度が測りにくい港湾基盤施設については、料金の徴収を禁止している(第44条第2項)。また、港湾法で料金の徴収を禁止しているわけではないが、自由に使用させているもの(例えば道路、橋梁、旅客施設などは部分的に料金徴収している場合もあるが)についてはその大半が無償となっている。

水域施設や外郭施設については、1954年に制定された港湾法において総合チャージである入港料を徴収できるとしている(港湾法第44条の2)。人港料は、外郭施設、水域施設など個別の施設使用料としては徴収がむずかしいものについて、入港する船舶から港湾の利用料金として徴収する。入港料は、負担者との協議で港湾の環境整備や保全に要する費用のうち海側負担分を原価に加えることとされている。現在、入港料を徴収しているのは124港にすぎない。

73年の港湾法の一部改正により、港湾法第43条の5にもとづいて港湾環境整備負担金制度が創設され、港湾における環境の整備または港内の清掃などに必要な費用の一部を、港湾に立地する工場または事業者に負担させることができるようになった。東京、川崎、横浜、名古屋、大阪、神戸、北九州の各港の管理者は、港湾環境整備負担金を徴収するための条例を制定し、80年度から施行した。ただし本来の入港料徴収の対象となる原価費用のすべてをもとに料金を定めているのではなく、港湾環境整備に関わる原価費用12項目のうち3項目に限って徴収している。

 

 

 

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