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固定資産除却費、固定資産売却損がある。すなわち、これらの科目については実際には現金を支出していないので、現金が企業内に留保され留保財源となる。なお、収益的支出で当期欠損金を計上した場合には、図表8-8(172ページ)のように減価償却費から当期欠損金をのぞいた額が損益勘定留保資金となる。

以上のように、経常経費のなかの減価償却費は企業債償還のための財源として使われている。つまり、港湾施設を建設するための財源として企業債を起債する一方で、建設後は減価償却費を計上して企業債の元金と利子を償還しなければならない。また、企業債の起債により港湾事業会計の負債が増加するから、これを補うために地方公共団体の一般財源から港湾事業会計への繰入れ、あるいは負担金という形で補填されている。図表8-6(170ページ)では95年度において主要8港で償却前赤字を計上していたが、これは留保財源が枯渇した状況を示している。

 

5)みなし償却

図表8-6では、国庫負担金等の港湾管理者以外の者が負担した分にかかる償却費は含まれていない。これは、官庁会計方式が実際の資産の価値を正確にあらわしていないとして問題視される点だが、みなし償却とよばれる制度で公営企業会計に固有な制度である。

公営企業の固定資産のうち国庫補助金により購入されたもの、あるいは国の負担金により工事が行なわれた場合については、その固定資産を取得するのに要した金額から国庫補助金や国の負担金、受贈財産評価額などをのぞいた金額を帳簿価格とみなして減価償却することができる。これは、地方公営企業法施行規則8条4項、および同規則9条3項にもとづく措置で、補助金などの目的が料金を抑制することであったり、あるいは国からの給付であるときに適用される。

通常は、固定資産を購入すれば収益的支出に減価償却費が計上され、その分費用が膨らむ。その費用を回収するために、サービスの使用料金を引き上げたり他の収入を増やす必要が生じる。しかし、国庫補助金により購入されたもの、あるいは国の負担金により工事が行なわれた場合には費用を回収して返却する必要はない。そのため、みなし償却という財務処理が認められている。

 

 

 

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