2)収益的収支のしくみ
公営事業会計の予算は、予定収支予算とよばれる。これは当該年度に予定されている業務内容をあらわしたものだが、収益的収支予算と資本的収支予算の二本立てになっている。すなわち、企業の活動にともなって生じると予想されるすべての収益とそれに対応する費用を計上する収益的収支予算、および施設の建設改良費などの支出やその財源となる企業債収入、国庫補助金収入、企業債の償還金など長期にわたるキャッシュフローを計上する資本的収支予算の2つに分かれている。
収益的収支予算の収益的収入には、科目として港湾施設提供事業収益が立てられ、その内訳は営業収益と営業外収益に分かれている。営業収益の内訳は、荷役機械収益、上屋倉庫収益、引船収益などに細分化される。営業外収益は、受取利息および配当金、雑収益などである。通常、収益的収入のなかでもっとも大きいものが営業収益のなかの上屋倉庫収益である。
収益的費用は、科目として港湾施設提供事業費が立てられ、その内訳は、営業費用、営業外費用、予備費に分かれている。営業費用の内訳は、人件費、動力費、補修費、減価償却費、その他である。営業外費用は、地方公営企業債の支払利息および企業債取扱諸費、繰延勘定償却、消費税、雑支出などから成る。収益的費用のなかで大きなものが、営業外費用のなかの支払利息および企業債取扱諸費、営業費用のなかの減価償却費、人件費、および補修費である。
ここで、図を使って収益的収支の「欠損」について概念的に説明する。
いま、ある地方公営企業の収益的収支が図表8-8(次ページ)のようになっていたとすると、支出が収入を上まわっているので「欠損」が生じている。しかし、これは「見かけ上の欠損」にすぎない。じつは、収益的費用に計上された減価償却費は実際の現金の支払いをともなわない費用である。この公営企業が収益的収支で欠損を計上した場合、実際には減価償却費から純損益の絶対額をのぞいた額が「損益勘定留保資金」(図表の斜線部分)となる。図表8-8について、減価償却費から純損益の絶対額をのぞくと償却前黒字の状態をあらわしている。留保資金の処理については次の項目で説明する。