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本研究における具体的費用項目としては、以下を取り上げている。

港湾利用料 : 水先料(タグ料を含む)、入港料、トン税、岸壁利用料、荷役料

船舶運航費用: 燃費(航行燃費十碇泊燃費)、船員費

船舶償却費 : 船型別平均償却費

先に政府の場合に図表7-12(157ページ)で述べたように、海運市場での船社間の競争は極めて激しい。特に同盟船社と盟外船社の間には過去、激しい競争が行なわれ、海運市場における激烈な運賃競争が行なわれてきた。しかし、その競争も同盟船社のコンソーシアム戦略等によって安定してきており、現在では、各航路での運賃格差は若干残るものの、次第に差はなくなってきている。このような現状および本研究の目的が競争実体の解明にはなく世界の外貿貨物の均衡フローの解明にあるため、船社間の競争は考えずに、仮想的船社1社として扱う。もちろん、船社間の競争が短期的均衡フローに影響はするので、この点を考慮するため、1船当たりの積載率(ロードファクター)をパラメトリックに変化させることで船社間競争を考慮する。

 

3)荷主の行動と戦略

荷主は、物流コストを引き下げることが、市場における競争の重要な視点である。そのために、荷主は、船社の配船サービスをみて、国内の輸送コストの低減を目指すとともに、港湾における便待ちによる貨物金利と海上輸送中の賃物金利および海上運賃の合計の最小化を目指して、国内の仕出し港湾および仕入れ港湾の選択と貨物の量的配分を行なう。したがって、荷主の目的関数と戦略は以下のように記述できる。

 

荷主の目的; 国内港湾へのアクセス・イグレス輸送費+港湾での便待ち貨物金利+海上輸送中の貨物金利+海上運賃 → 最小化

荷主の戦略; 仕出し・仕入れ港湾の選択と貨物配分

 

ただし、港湾アクセス・イグレス輸送費は、最小費用経路(手段を含む)をとるものとし、特定ゾ―ンから、個別港湾までの費用最小ルートを外生的に与えることとして、アクセス経路選択モデルは明示的に取り扱わない。

 

(4) モデル構築と試算に向けて

 

以上のような考え方に基づいて、現在、数理モデルが構築されており、本章第1節(4)で述べた目的を検討するためのデータ収集、各種推計が進められている。簡単なテスト・ケースでは、モデル・パーフォーマンスが良好な結果を与えているので、次年度に向けて、効率的なモデルの解法アルゴリズムの開発が行なわれている。

 

参考文献

土井正幸「東・東南アジアにおける経済発展と主要コンテナ中継輸送」、『日本港湾経済学会年報』、1993年10月

日本貿易振興会『世界と日本の海外直接投資』、1993年

運輸省港湾局『港島国日本の礎―国力の源泉は港にあり―』、1996年9月

国際港運連盟第3回通常総会報告書より作成、1995年10月、バルセロナ、スペイン

黒田勝彦・安藤昌輝「阪神淡路大震災による神戸港利用荷主の輸送費増加損失について」、『土木学会阪神淡路大震災土木計画学調査・研究論文集』、1979年9月

Containerization International Year Book

土井正幸『発展途上国交通経済』頸草書房、1995年

Kuroda and Zan Yang,Stackelberg Equilibria Analysis of Container Transport Market,Journal. Of EASTS,1995

 

 

 

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