為替金融業者、パイロット業界などが関係しているが、ここでは、港湾運営に関わる主体を一括して「政府」と呼称する。
さて、政府は外貿コンテナ・ターミナルをどこに、いつ、どれほどの規模で整備するか、トン税、パイロット料、入港料、岸壁利用料、荷役料、開港時間、荷役可能時間などを選択できる自己の戦略として保有している。政府はこれらの戦略を選択することにより、自国の経済発展を目指す。そのために、他国政府の動向を勘案しながら外国貨物の集荷政策、船社の寄港便増加対策、自国荷主の利便性向上、さらに施設整備・運営の波及効果などを勘案して、効果的な整備政策・運営政策を考える。その際、政府は、政府の港湾施設整備と運営戦略に対応して、船社が最適行動(利潤最大化行動)を起こすことを知っており、さらに、船社の行動に対して、荷主が自己の最適行動(輸送コスト最小化行動)を決定することを知っている。
厳密には上記の目的を目指して戦略決定がなされるべきであるが、ここでは簡単化のため、施設整備の波及効果は考慮しない。したがって、政府の目的関数は以下のように記述することができよう。
政府の目的; {(トランシップ貨物荷役料収入+港湾利用料収入+施設使用料収入)-(施設遊休損失+自国内荷主の港湾アクセス・イグレス費用)}→最大化
政府の戦略; 施設整備戦略:外貿コンテナ・ターミナル整備場所および規模(新設および既設バース数で表現)
湾運営戦略: 港湾料金(入港料、トン税、パイロット料)施設使用料率(荷役料、岸壁使用料[含ターミナル利用料])開港時間、荷役可能時間
上記において、多くの外貿港湾においては、コンテナ・ターミナルを単独または数社の船社の専用ターミナルとして賃貸する場合が多いが、ここでは、専用貸し・公共の区別は考えずに、公共ターミナルとしての取り扱いをし、ターミナル使用料は岸壁使用料に含めて考える。特に専用貸しによって発生する荷役料率の低下や施設利用料の低下については、分析の際に、荷役料や岸壁使用料をパラメトリックに変化させることにより感度分析の形で考慮することにする。
2)船社の行動と戦略
船社は各国の港湾整備・運営状況を前提として、自己の利益が最大になるように、航路選択、寄港地選択、便数および船型選択を行なう。この際、船社は自己が採用する戦略に対して荷主が最適行動(物流コスト最小化行動)をとることを知っている。すなわち、各戦略に対して、各港湾での取扱貨物量がどの程度になるかを知ることができる。したがって、船社は自己の利益最大化行動をとることができる。船社は、貨物輸送によって利益をあげるが、輸送に伴う費用を最小化したい。したがって、荷主の目的関数と戦略は以下のように記述できる。
船社の行動; 海上運賃収入―(港湾利用料+船舶運行費用+船舶償却費)→最大化
船社の戦略; 海上運賃率 航路(寄港地を含む) 航路ごとの投入船型・便数