どのサービス水準改善や体系的な危機管理を図っていかなければならない。同時に、その国内フィーダー輸送のネットワークの拡大・充実化が不可欠で、より広範なサービス展開が必要である。こうしたサービスや料金の改善により港湾需要の拡大が進めば、経済空洞化防止や利用船社の強化につながり、さらにあらたな港湾発展への期待がもたれる。
(4) 地域経済分析のための港湾ネットワークモデル
本研究は上述した認識のもとで、東・東南アジアを中心とする港湾ネットワークにおいて、現在の各港湾の背後圏経済を前提とした場合、日本の港湾の整備・運営の改善が船社、荷主の動きにどのような影響を与えるかを港湾ネットワーク均衡モデルを構築して検討する。
主要な検討課題は、以下のとおりである。
?@阪神間外貿港湾でのコンテナ・バース整備の影響
?A神戸港での料金政策変化の影響
?B基幹航路におけるコンテナ船の船型超大型化の影響
これらは、次節で述べる市場均衡での相対的短期的均衡に相当し、市場における経済的影響としては直接効果と間接効果部分に分かれる。本研究では、港湾施設投資の間接効果を分析するのではなく、施設整備や運営政策の変化が、船社・荷主の行動パターンの変化として現われる現象をネットワーク均衡モデルで部分均衡解を求め、それらが、荷主の時間短縮効果、港湾運送事業者の取扱貨物量変化による収益効果、船社の収益効果となって現われる直接効果を計測する。もちろん、これらの主体ヘの直接経済効果は、長期的には、さらに関連産業への波及効果として現われる。従来、これらの直接・間接経済効果の計測では、本研究で取り扱うような国際海上輸送でのネットワーク均衡を無視した方法が主流であったが、本研究では、それらの経済効果算定の前提となるモデルを提案し、船社・荷主への直接経済効果を計測する。
以上をネットワークモデルでシミュレーションすることにより得られた知見から、日本の港湾整備・運営に関する方向を提言する。
次節では、ネットワーク均衡モデル構築のための考え方について述べる。