上表に示したように、アジアの主要港の性格は、以下のようである。
a.シンガポール港
シンガポール港では、全取扱量の約6割を狭義の中継輸送が占め、再輸出を含めた広義の中継輸送は約8割を占める。このように、シンガポール港では量的に圧倒的に中継輸送が他港を引き離している。シンガポール港は特殊法人である港湾庁(PSA:Port of Singapore Authority)と政府が連携して積極的なコンテナ中継輸送促進策をとっており、中継コンテナに対する優遇措置などにより、港湾料も最も低い。
シンガポールはASEAN諸国、インド、その他の東南アジア諸国を直接背後圏とするとともに、その地理的優位性を利用して、全アジアの欧州航路・中東航路の寄港港となり、また、北米航路の出発港の位置も占めている。
b.香港港・高雄港
香港港は狭義のコンテナ中継輸送では2割と高雄港の3割に比べて低いが、再輸出を含めた広義の中継輸送では、香港港は5割を超えているとみられ、近年の広東省の委託加工との関係から再輸出が多いと考えられる。香港港は華南経済圏がほぼ背後圏を占めており、コンテナの沖取りもかなり多い。一方、高雄港はフィリピンなど東南アジアを背後圏として抱えているが、再輸出の定義や統計もみあたらない。香港港・高雄港はいずれも、極東・北米航路を基本としている。
c.釜山港
釜山港では、92年頃まではほとんど中継輸送がみられなかったが、中国北部の経済発展によって93年には約10%弱、94年には約15%の中継輸送がみられるようになり、北部中国の外港的役割を担っている。
d.日本の港湾
日本の港湾のコンテナ中継率は、神戸港で約25%、横浜港で約15%である。神戸港は上海を中心とする華中経済圏からのコンテナ貨物や韓国からの中継輸送が多い。東京・名古屋・大阪では中継輸送は1割を下まわっている。