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るに至ったのは広東省を中心とする中国華南経済圏の急成長によるところが大きい。このように、港湾取扱貨物量の推移は背後圏の経済繁栄の動向を如実に反映するものである。

 

注6 Containerization International Year Bookより作成

 

2)港湾機能の特徴と基本的考え方

先にみた港湾取扱貨物量ランキングから、港湾間競争に関して錯覚した議論が生まれやすい。それは、個別港湾の機能を考慮していないことからの表層的議論であることが多い。以下、この点について述べる。

?@国際コンテナ取り扱いの機能分類と競争の余地

港湾取扱貨物量ランクをみて、国際コンテナ港湾はコンテナを奪い合って全面的に競争しているような議論がされやすい。そうした表層的議論から、港湾間競争に打ち勝たなければならないとする主張が事実頻繁に聞かれる。しかしながら、そもそも輸送サービスのターミナルとしての即地性という固有の事情から、あくまでも各港湾背後圏の経済状況による需要動向が港勢を基本的には規定するもので、特に各港湾の直接の国内背後圏の地場輸出・本輸入の需要動向については他港がそれを脅かすことはできない。

しかるに、国際基幹航路に就航する大型コンテナ船は寄港港をごく限った数に絞って効率的な運航をしなければならないため、その主要な寄港地として選ばれるコンテナ港は中継輸送などを通して、地域のコンテナ輸送ネットワークの中核となるハブ港として選択されるようになる。コンテナ中継輸送の定義としては、狭義には、Trough B/L(通し船荷証券)により、実際に中継輸送されるコンテナは中継港で一切開けられることはない。一方、広義の中継輸送として、シンガポール港や香港港にみられるように、一度輸入した貨物を何らかの加工を加えることなく、品質の等級付け分類や再包装のみで再輸出する場合も統計上トランシップ貨物として扱われる。

香港では、輸出品の貿易統計上の付加価値増加がFOB価格の25%未満の場合はすべて中継貨物として扱われている。いずれにせよ、マイナーな操作のみで再輸出される貨物は地場輸出貨物と区別される。

このように、特定のハブ港湾にみられる再輸出の動向についても、やはり、その港湾の直接の背後圏の経済機能とその中継輸送圏内の特定の近隣国の経済機能とがあいまって初めて需要創出されるもので、地場輸出・本輸入と同様に他港に脅かされることは想定しがたい。同時に、狭義の中継輸送の対象となるコンテナ輸送需要に対する競争の余地でさえも、中継輸送圏としての特定の周辺国の経済・政治・社会的状況および港湾整備状況が当該ハブ港の中継機能港勢を規定するところが大きく、他のハブ港がこれに競争を仕掛けて地理的・航路的・政治的関係からくる立地条件を克服するには限界がある。ただし、国際コンテナ・ハブ港が十分に近接しフィーダー輸送が充実する場合には、狭義の中継輸送をめぐってある程度の競争の余地は残る。この場合、各ハブ港では中継輸送需要を獲得するために、とりわけ大手外航船社の基幹航路寄港を誘致するために、整備・運営面で競争できる場合があり得る。具体的には、

ア)広い前面水深と大水深コンテナ・ターミナルの整備

イ)スーパー・ガントリークレーン設置による荷役効率上昇

ウ)コンピュータ導入による荷役、手続きの効率化

工)大手船社によるバース専用(リース)または優先利用

オ)港湾料率の優遇

力)自由貿易港の恩恵提供

などが考えられ、コンテナ中継を含めてコンテナ港は、限定された範囲内での競争を行なう一方で、それぞれ独自の役割分担をしながらネットワークのなかで互いに補完関係にある。

 

 

 

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