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第7章 港湾ネットワーク均衡モデルの構築を目指して

 

1. 外貿港湾整備運営に関する問題の提起と取り組み

 

(1) 港湾運営問題の従来からの取り組み

 

わが国の貿易のなかで、まず、輸出については、鉄鋼・セメント・肥料などのバルク貨物や乗用車に対して、機械類、電気製品、その他で占められる雑貨は重量ベースでは、半分あまりにすぎないが、金額ベースでは、およそ8割にも達する。一方、輸入については、液体貨物(原油、重油、液化天然ガスなど)や鉱産物と農産物等の主としてドライバルク貨物を除いたその他のドライ貨物の大半を占める雑貨は、重量ベースでは、1割にすぎないが、金額ベースでは、およそ6割にも及ぶ。このように貿易額の中心を占める雑貨の国際輸送を担う外貿定期船輸送部門は、すでにコンテナ化率がおよそ9割と成熟している。本研究の目的であるコンテナを受け入れるわが国の外貿コンテナ港の整備・運営について、従来より以下のような指摘がなされている。

?@コンテナ取り扱いの高料金水準

コンテナ1個あたりの港湾関係費用をみると、諸外国の港湾はもとより十分なターミナル用地を確保できない香港港より高いという報告がある。これを費目別にみると、入港料、パイロット料、接岸料、および荷役料が他港と比較して高いことが指摘されている。また、荷役料のうち、荷役機械オペレーターやその他の人件費、公社ターミナルの賃貸料金の割合が8割近くを占めている。

?Aコンテナ・ターミナルの管理・整備・運営主体と関連関題

欧米などでは、行政から離れて企業経営による独立採算制を前提とした港湾整備・管理・運営がポ―トオーソリティのような一元主体である場合が主流である。一方、わが国の外貿コンテナ・ターミナルにあっては、5大港の場合、港湾管理者が地方自治体であり、各港の埠頭公社が建設を行ない、入札によって船社に専用貸しをする形態をとっている。これを借り受けた船社は、当然ターミナルの管理・運営に責任を負うが、実際の運営・荷役は契約したコンテナヤード・オペレーターと呼ばれる元請港運業者とその下請荷役業者が行なっている。重要港湾の場合、港湾管理者は地方港湾審議会の意見を聞いて港湾計画を定めるが、小さく区切られた港湾ごとに互いに整合性がない港湾整備を競うために投資の重複が起こるという問題が指摘される。そして、公社が整備する際の財源について、船社の専用利用のため、国や管理者は無利子貸付という形をとっており、船社の負担が上述のように重くなっている。また、船社がコンテナ・ターミナルの施設を改良するなどにあたっては、欧米のコンセッション方式などと比べて自由度が少なく、使いにくいという声も聞かれる。

 

 

 

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