日本財団 図書館


?@投資資金が配当に回ること

?Aすでに中央・地方政府からの多様な資金供与制度があること

?B公有下で十分営利的なこと

?Cすでに積極的不動産投資を行なっていること

?D港湾区域内規制権限のため湾口独占を生じること

?Eトラスト制度の手続き的な望ましさ

?F後継会社が営利追求に走ることへの懸念

?G単なる政府の収入獲得であること

があげられている。

民営化後の諸港は積極的に事業拡大を行なったが、その中心は港湾事業に直接には必要のない港湾周辺分野であった(英国港湾連合[ABP]のケース)。とりわけ不動産開発が目立ち、急増した収益源は港湾用地の非海運企業への賃貸収入であった。個別労働協約や新規慣行の導入によって従業員の雇用条件が変化し、労働生産性が大幅に改善された。ただし、これは民営化よりは全国港湾労働計画(NDLS)廃上の結果と考えられた。

Baird[1995]は、トラスト港湾民営化手法を、以下の理由で失敗であったと評価している。

?@実質市場価値を下回る売却

?A複数応札がなく競争入札にならなかったこと

?B経営者・従業員売却(MEBO)が達成できなかったこと

?C湾口独占を生じたこと(ただし、従来から港湾間競争は確保できている)

である。

 

(4) 英国の政策が意味すること

 

英国の港湾民営化をめぐるダイナミックな政策変化とこれまでの成果からみて、わが国の港湾においても民営化を政策選択肢のなかに含めて考える必要があると思われる。とくにわが国では制度上、港湾管理、ならびに港湾運送などの港湾産業を完全に2分している。このため、港湾サービスの供給に関する選択肢を意図的に狭めている面がある。英国でのトラスト港湾民営化をめぐる若干の混乱は、主に会社法により従前と同じサービス範囲を維持し港湾を存続させるためのセーフガード措置から派生するものである。また、実際の株式売却手法に関連した批判もあるが、このこと自体は、民営化政策の意義を損なうものではないと考えられる。

英国の民営化の教訓は、今後整備される港湾に関しても当てはまり、民間企業に一定期間の港湾運営のための特許を交付することによって投資への誘因とするBOT(Build Operate Transfer)方式などに課題が生じるであろう。これまでのわが国の港湾整備でも、コンテナ埠頭を中心に、他のインフラ整備に先駆けて民間資金導入を行なっており、その経験を一層活かすことが求められる。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION