日本財団 図書館


(2) トラスト港湾の民営化

 

第1期民営化は、民営化自体には成功したものの、トラスト港湾の民営化は遅れた。その理由は、個別に法案を議会通過させることが困難であったためである。トラスト港湾は、一般的に収益性は高かったものの、保有資産を抵当化して資金調達を行なうことができず、事業拡大の制約となっていた。

この問題を解決するため、1991年港湾法は、第2期の民営化として、トラスト港湾の1985年会社法下で登録された民間(株式)会社への移管を規定した。

年間売上5億ポンド超の15港については、1991年法施行後2年を経過しても(93年7月以後)売却を行なわないとき、交通相が強制的に売却計画を策定できるとされた。また50%の課徴金が維持され、売却収入の半分が国庫、残りが新規民間会社に還元されるものとされた。この還元規定は売却会社の資産価値を高め、株価引上げにつながる側面をもつ。売却後の土地処分にも課徴金が規定された。

政府は、このような制度に基づいて、公開上場ないし競争入札による経営者や従業員への株式売却(MEBO)を意図した。英国での民営化手法として、この他随意売却がある。各民営化手法の利点と欠点は、以下のとおりである。

?@公開; 資産価値を最大にし、もっとも広範な所有構造を保証し、売却プレミアムが広く分配される一方、買収が難しくなる。証券取引側の要請と手数料のために大規模事業に限られる。

?A競争入札; 株式ではなく資産売却の形態をとり、一人の入札者に売却されるが、経営者か従業員に売却が行なわれれば効率改善のインセンティブとなる。

?B随意売却; 購入者を自由に選択でき、価格は交渉によって決定されるが、市場価格以下となる。

1991年法による最初の売却は、ティーズアンドハートルプール港務局の地域運輸会社への売却であった。当該売却における交通相の売却決定基準は、

?@経営者。従業員売却(MEBO)への特段の配慮

?A自由市場における最高値実現と民営化後の自治体の利益の間のトレードオフに配慮

?B購入会社役員との事業計画に関する密接な検討

であった。

92年にはミッドウェイおよびティルバリー(ロンドン港)両港が経営者・従業員買収(MEB0)によって落札され、フォス港が株式市場に参加した。これらの大規模トラスト港湾の民営化によって、100大商港取扱量のうち60%以上は民間セクター管理港が占めるに至った。

 

(3) 民営化政策の評価

 

Thomas[1994]が他論文の引用によって整理しているところで、民営化(一般)の目的は、

?@規制構造改善によって経営者責任を与え、資本市場の規律を実現し、事業機会を拡大すること

?A閉鎖・買収の圧力を課し、労組の力を減じ、効率的な人材活用を可能にすること

?B政府歳入の増加

?C従業員持株により、株主を分散させること

にあるとされる。

トラスト港湾を対象とした1991年法の趣旨もほぼ対応したもので、とりわけ?@のなかでの投資や残地開発を目的としていた。

トラスト港湾民営化反対論の理出としては、

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION