6. 競争時代の港湾管理の考え方
Heaver[1995]によれば、港湾政策は国際的にも以下のような転換を追られている。
近年、英国、ニュージーランドなどで大きな政策転換があったが、港湾を他の経済セクターと同様にみなす見方は稀であり、英国の民営化においても同様である。港湾における政府介入の理由は、港湾適地の限定性、投資の不分割性、背後圏の自然的形勢にあり、重複投資を回避するための政策介入が行なわれてきた。このことは、港湾施設の耐用年数の長期性のために生じる需要予測の誤差につながり、過剰能力リスクを助長させている。しかし、現実には、米国の鉄道会社がカバーする港湾を除き、港湾の独占行使や港湾間カルテルが存在するという証拠はない。
専用使用の増加とターミナルの固定性のために、港湾が少数の利用者や特定のロジスティクス・システムに対応する必要が生じ、ターミナルヘの民間投資が増大した。また、海陸両方の輸送の効率化により、港湾・航路間競争が増加し、港湾の地理的独占範囲が縮小した。投資の固定性により、バース貸し契約が長期化し、ターミナルがロジスティクス・システムのハブとしての役割ももちはじめた。
米国では、鉄道会社による港湾事業支配を排するために、公共セクターの港湾管理者が設立された一方で、ターミナル・オペレーターは、最近見直し論議にあるものの、海運同盟等の反独占法適用除外を享受してきた。
カナダにおいては、1983年法によって採算性のある大規模港湾に対し、過剰投資競争防止のための計画承認を条件として、地方港湾公社の設立が許可された。
ニュージーランドでは、港湾管理者の特殊会社化が行なわれ、国際港湾13港中9港は完全に、4港は大部分が自治体所有の独立組織とされたのち、自主的な民営化に向かった。
全体として、国際的にみて、地方分権と競争的環境への対応が趨勢となっている。しかし、自治体によって港湾投資の決定が行なわれる場合、過大投資への動機づけがあり、港湾管理者が課税権を有する場合にはこの傾向が助長される。
世界的にみて、各国の全国的港湾政策への課題としては以下がある。
?@代替的港湾選択の可能性によって、各国・各港湾ごとの補助率の差が輸送配分を歪める影響が深刻化しており、問題が国境を越えて生じている。このため国際的政策調整の必要が生じている。
?A個別港湾の独立採算を保証することによって大局的には内部補助が制約され、港湾は荷主のロジスティクス選択に対応しなくてはならなくなる。営利的基準のもとで過剰投資は減る。
?B各地方が独立の立場にある競争的環境下で、ターミナル・港湾管理者は他港の政策に懸念をもつべきであり、ロジスティクス・チェーンにおける荷主ニーズに対し、革新的でありかつ責任をもつべきである。
?C公的資金の制約とターミナルの専用性のために、民間企業体の役割が増大している。
各国の港湾管理者レベルでの課題としては以下がある。
?@ターミナルの専用性が高まるなかで、港湾管理者は業務を保安確保、EDIなど、規模・範囲の経済の実現に集中すべきである。
?Aキャパシティー計画には、港湾・ターミナル、とりわけ水路・土地造成事業の固定性と長期性の問題がある。港湾施設には過剰能力の懸念があるため、長期契約、長期コストによる価格形成が望ましい。
?B港湾当局は競争を通じて経営成果に敏感になるべきであり、同様の趣旨で、成果指標に関する制度を確立する必要がある。