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今後、荷主企業の規模変化、高速道路などの内陸輸送の高規格化、荷主企業のコスト意識の一層の強化が進行するとすれば、港湾素通り貨物の増大が生じることも考えられる。港頭地区の施設に対する内陸流通センターの最大の優位として、スペースの制約を受けにくく、貨物の上下移動のいらない平屋建て施設の建設が可能という点があげられる。

港湾の活性化のためには、コンテナ貨物のバンニング・デバンニング、荷さばき、流通加工などの業務を港湾地区内で行なうための必要な規模を備えた施設の整備、ならびにそのような作業を低コスト・高サービス水準で行なうための運営ノウハウの開発が必要となる。

また、流通センターヘの追加投資を通じてFCL輸送を行なっている荷主の状況を改善すれば、わが国全体としての物流効率化に寄与するはずである。

自治体条例による土地利用や施設利用方法の柔軟化をはかっていく必要もある。たとえば、倉庫業規制見直しにより、倉庫施設でより安価な流通加工業務が営めるようにすること、国内貨物と外貿貨物の取扱区分のある程度の柔軟化によって、国内貨物と外貿貨物を組み合わせての流通加工が可能になるようにすることに必要性がある。

わが国から海外への産業の移転には、生産拠点の移転に加えて、流通加工機能の移転の要素も強い。荷主の流通加工場所選択には強い指向性があり、輸入品の検査業務などを日本国内で行なうことには強いニーズがあるといわれる。それにもかかわらず、部分的な海外移転を生じていることに、問題の深刻さがある。わが国の港湾は、地理的にもロジスティクス・チェーンのうえからも、国内の内陸流通センターよりは海外の製造拠点に近い立地にある。港湾地域においてそのような業務を低コスト・高サービス水準で行なうことに課題が生じる。現状の港湾地区での大規模流通センターの整備は、施設整備の方向としては好ましいといえる。しかし、今後は資金調達方法や運営方法を見直し、同時に労働力の質・量両面での柔軟性を拡大する必要がある。

将来的には、港湾地域における流通センターの機能をより高度化し、在庫管理、商品展示、販売、アフターケアなどの商業機能をもたせることも課題となる。ただし、そのような展開は施設整備のみが先行する形態では成功の見込みが低く、あくまでも港湾物流業者のノウハウ蓄積と並行する形で行なわれる必要がある。このような事業活動は、FAZなどによる保税機能の確保によってより有利性を増すこともあろう。しかし、いたずらにFAZの指定を行なうのではなく、物流業者が、タックス・へーブンなしでも流通産業一般と競合できるだけの効率性やマーケティングの才覚をもつことが前提条件となろう。たとえば、パソコンは組立に要するコストの総原価に占める比率が低く、その一方で非常に短い生産のリードタイムのなかで、多様なスペックの組み合わせに対応しなくてはならない。このため米国人系メーカーは、山九、日通、富士ロジテックといった物流会社との提携を行ない、物流会社倉庫を最終組立・検査工場として利用している。なかでも日通は、このプロセスからユーザー配送までをパッケージ化し、「パソコン・キッティング・サービス」として商品化している。パソコンのように非常に短いリードタイムを要求される商品では、消費地に近く輸送距離を節約できる港頭地区での広範囲の流通加工に大きなニーズがあると考えられる。

 

 

 

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