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陸上側にネットワークをもつ運送企業と港運業との共同化は、一部を除いて今後の課題である。とりわけ、陸上輸送の大宗を担う大手トラック会社との連携には、港湾物流企業の内陸展開とトラック会社の海上や海外への展開の両面でメリットがあると考えられる。トラック運送にノウハウをもち、内陸に高密度のターミナル・ネットワークを有する大手フォワーダーの存在は、わが国の物流にとっては大きな資源である。これらの事業者のサービスを国際輸送にリンクさせていくことが課題となる。

都市内の交通量を削減し、輸送効率を高めるために行なわれているトラック事業者や一部荷主企業の共同配送に、港運業者のターミナル施設を活用することも考えられる。トラック会社にとって、港湾という大規模ターミナルにおいて帰り荷情報にアクセスすることのメリットは大きいと考えられる。また、国内物流において課題となっているモーダルシフトについても、内航や貨物鉄道との共同化を通じた地域・貨物の特性に応じた柔軟な形態ですすめられるべきと考えられる。

1984年米国新海運法が立法のひとつの趣旨としたように、多様な形態のフォワーダー事業の展開が行なわれれば、海上部分の技術的特性に直接にとらわれることなく、物流市場での有効な競争を確保することができる。その意味では、89年の物流二法制定時は見送られたが、港運元請業者をフォワーダーとして正式に認知する必要性は高く、そうすることによって、国際複合一貫輸送のメリットを荷主に行き渡らせることができるのである。

世界的にも限られた場所でのみ展開がみられる海空複合一貫輸送(シーアンドエア)についても、デポの立地やアクセス交通、荷役技術などを含めた物流企業間の協力態勢が整えば、有望な市場になる可能性もある。わが国の港湾と空港を中継地とするシーアンドエア輸送については、仙台・沖縄を除いて港湾と空港の配置自体がサービスの供給に適さない。また、その他にも運営上のいくつかの間題が、実現性を阻んでいる。たとえば、税関の対応、航空貨物側施設で海上コンテナのデバンニングができない、港運側の細分化された事業区分とこれに伴う陸上輸送の必要、などである。複合一貫輸送実現の面からも、港運業の共同化・集約化に課題がある。

対中国貿易などの増加によって特定の港湾がアジア域内の特定国との関係を強め、とりわけそうした国からの輸入に特化しつつある。港運業者も輸入製品の取り扱いをステップとして、相手国側での物流事業への進出や開発、輸入などの商社機能を代替していく可能性がある。こうした新規事業展開を行なううえで、港運業者は比較的有利な地位にありながら、その優位性を自覚していないケースが多いのではないか。

 

(2) 貨物の港湾素通り対策

 

輸入貨物の増大のなかで、製品構造の軽薄短小化が進行した結果、コンテナ化率の上昇にもかかわらずFCL貨物の比率は増加せず、依然としてバン詰め(バンニング)、バン出し(デバンニング)が行なわれている。そのための業務の発生場所は、輸出で85年に港頭区60.2%、内陸地区38.9%であったものが93年にそれぞれ50.2%と48.1%となり、港湾地域でのバンニングのシェアが減少している。輸入では同じく港頭区51.1%\、内陸地区46.7であったものが、それぞれ39.6%、57.7%となり、輸出以上に港湾地域の減少率が大きく、貨物の港湾素通りが生じている。総じてバンニング・デバンニングの多くは、荷主企業ないし物流業者の内陸流通センターにおいて行なわれているのである。

貨物の港湾素通りが進行しているのは、荷主企業が内陸流通センターでのデバンニングや流通加工を指向するからである。とりわけ、自社配送センターを所有・運営できる大手の高品質貨物荷主の貨物について港湾素通りが多く、

 

 

 

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