とはいっても、料金制度の導入に非常に長期にわたる交渉と調整を要するので、現在行なわれているスピードでの改革では、物流市場におけるダイナミックな変化に到底ついていけない。
わが国の大規模港湾における水先サービスの必要性自体については疑いない。しかし、強制水先の地理的範囲と船舶サイズの範囲、ならびに水先人の資格要件については十分な再検討が必要である。とくに、神戸港と大阪港、横浜港と東京港などの港湾間、あるいは同一港湾内の入港バースごとの水先規制の格差については、安全規制という趣旨に立ち返って見直しが求められる。
(2) 今後の港湾物流政策の方向性
島国でありながら産業の集積したわが国は、一国としては海上貨物のターミナル・デマンドが大きく、わが国の主要港湾は依然として地の利を得ている。そのために、港湾運営の非効率や問題点が顕在化せず、多くの港湾や港湾産業が生き残りを果たしてきており、またしばらくそのような状況が続く可能性がある。アジア諸国の拠点港湾と比較して、わが国の拠点港湾は投資時期が早く、この点も価格競争力、少なくとも財務成果にはつながっている。全体として、わが国に有利な国際競争であるにもかかわらず、国際物流をめぐる競争において形勢が不利になっているところに、わが国の港湾の抱える複雑な問題があるのである。
港湾管理者が、港湾の運営効率を高めるための試行錯誤を繰り返すなかで、長期的な整備計画やその見直しの必要が明らかになる。国と地方の間の補助金や管轄権に対する責任が明確でなかったり、港湾管理者が港湾の効率性を左右する港運の運営に直接関与できなかったり、現在の港湾運営をめぐる組織は、責任体制の面で問題を含んでいる。
既存バースの稼動率は港運の問題として、稼動率を高める努力をせず、これを前提とした需要予測を行なって新規投資を正当化するような制度のもとでは、低コストで高品質の港湾サービス提供はおぼつかない。整備と運営が一体として考えられていないという点では、97年3月の総合物流施策大綱における港湾政策でも方針が改められていない。
価格のみならずサービス水準面でも強力な競争力をもつアジア諸国と競合していくわが国の物流は、少なくとも欧米以上の効率性を達成し、港湾産業や陸運業者も国際化を果たしていかなくてはならない。これまでのように、国内の利害調整だけに終始していればよいという時代は終わった。EUおよびFMC(米国連邦海事委員会)との港運に関する協議は、国内調整時代の終わりを象徴する出来事であった。
港運の免許制などの需給調整規制については、総合物流大綱では5年以内に廃止するとされているが、問題を先送りすることなく、実行する必要がある。施設としての港湾は、それを十分に活用できる者によって活用されて初めて生きるのであり、その役割を果たせるのが既存事業者とは限らない。