3. 港湾物流効率化への取り組み
(1) 港湾における物流効率化の進展
様々な改革論議が高まるなかで、わが国の港湾運送事業をめぐる産業・労働慣行については、改善がすすんでいるとはいえ、依然として多くの問題点を抱えている。
荷主企業が港運業への要望としてアンケートにおいて回答しているところで、料金の低廉化を求めるものが90%台、料金体系のわかりやすさ、緊急出荷に対する柔軟な対応、各種物流施設の運営時間帯の延長、および各社業務の迅速性の向上がそれぞれ60%台(複数回答)となっている(横浜港活性化対策調査委員会[1997])。
わが国の港湾は、原則として日曜・年末年始は不稼動であり、コンテナ・ヤードのゲート・オープン時間は、8:30〜12:00と13:00〜16:00に限られているなどの制約がある。このため、航海スケジュールの余裕を考慮すると、入港が月〜木曜日の午前中に集中するなどの問題を生じている。日曜・夜間荷役の原則禁止は、わが国の港湾のサービス水準を低下させている。
このなかで、91年以来中断していた日曜荷役については、阪神・淡路大震災への緊急対応が契機となって95年から再開された。しかしこれまでのところ、緊急避難的な利用にとどまり、神戸港を除き日曜荷役件数自体は少ない。
時間外荷役に対する現行の超過料金(10割)については、批判も多いところであるが、供給者側に24時間・日曜荷役実施に向かうためのインセンティブを提供するという意味で、移行措置としての評価は可能である。現在でも清水港など日曜を含めて24時間荷役に制限のない港湾、あるいは名古屋港のように本船荷役時間とゲート・オープン時間が長く設定された港湾があり、国内の港湾間でも利用可能性に差果がある。こうした競争を一層促進すると同時に、同一港湾のターミナル間でもサービス水準に関する競争を生じさせていく必要がある。また、通関時間に制約をもうけざるをえないとしても、内航を対象とした24時間化は可能なはずである。その際に必要な環境整備に努めるべきことはいうまでもない。
80年の労使確認に基づき行なわれてきたコンテナ貨物の全貨検量については、輸出FCLに対する義務づけを一時に廃止すれば検量労働者の雇用問題が生じる。そこで、96年からの5年間で段階的に削減することが確認されている。
港運料金については、全国一斉改定、港類別グループ料金、5大港を基準とした港類格差率による決定が行なわれてきた。95年から5大港を基準とした港類格差率による決定を改めて港類別原価に基づくとし、大口割引要素を導入した点など、若千ではあるが画一性が取り除かれ始めている。また、海外他港との直接の競争にさらされているトランシップ貨物の荷役料金割引、同様の趣旨での空コンテナの割引などは実際には行なわれているといわれている。今後ますます激しくなる港湾間競争のなかでは、港運料金を一層自由化する必要がある。
港湾管理者の設定する港湾料金については、たとえば係留施設使用料では、63年以来、8大港統一料金が設定されてきた。形式的にせよ港湾間競争を排した場合、稼動率の低い施設を建設しても、これまでは当該港全体の港湾収入のなかでコストのカバーが可能であった。港湾環境整備負担金としての入港料にしても、環境対策費を微収するという趣旨自体は誤ったものではない。しかし実際には、環境コストの大小にかかわらず、地方港を含めて課徴され、港湾料金の画一化を助長してきた。97年5月から係留施設使用料の24時間制が12時間制に改められるなど、利用実態に即した料金形成に向かう方向にある。