航路が集中しているため再輸出センター、空コンテナ受入れ場所としての機能も果たしている。とくに香港とシンガポールの2港は、年間取扱量が1,000万TEUをはるかに超え、定期船海運のグローバル・アライアンス結成の焦点となった。
中国関係航路では、現在、世界最大の取扱量増加が生じているものの、上海と天津以外の港湾開発が遅れている。中国発貸物は、トランシップ港として香港を利用し、中国各港と香港の間でフィーダー輸送が行なわれている。台湾では、産業(立地)誘導とともに、高雄、基隆、台中の3港の機能分化が行なわれ、高雄へのトランシップの集中が行なわれてきた。
そのなかで港湾オペレーターのひとつであるハチソン社(香港)は、1991年に英国のフェリクストウ・ターミナルを取得して以来、各国への港湾投資を行ない、世界のコンテナ荷役量の7.6%を占めるに至っている(1995年)。シンガポール港庁(PSA)をはじめとした各国での港湾民営化に伴い、港湾の買収やターミナルヘの新規投資はますます活発化し、民間企業らしい戦略の明確な港湾投資が行なわれていくものと考えられる。
2. 港湾物流をめぐる政策論議
(1) 物流内外価格差に関する調査
ここ数年、わが国では、国内物流、国際物流の国内部分のコストや運賃に関する国際比較が盛んに行なわれるようになってきた。
西村[1996]は、流通分野の効率性評価によく用いられる流通迂回率(W/R比率)、すなわち[卸売業売上高/小売業売上高]と同様の発想によって、マクロ・データから、わが国の流通マージン率が、米国のように経年的に低下していないとの結論を導いている。この分析では、商流と物流が区別されず、現実の縦割り行政への政策提言につながりにくいものの、内外価格差問題への有力なアプローチとなっている。
西沢[1996]は、個別アンケート調査とマクロ・データの両方から、売上高に対する物流コスト比を計測し、米・英に比べてわが国の減少が小さく、物流費のなかでの輸送費のシェアが増大していることを示している。
両氏の調査では、わが国の流通ないし物流セクターにおいて、技術革新や生産性の改善がすすんでいないという結論が得られている。
一方、運輸省[1996]が行なった物流内外価格差調査では、日米欧の運賃表自体が比較されており、日本の物流運賃は小口・短距離で安価であり、全体としても海外に比べて割高でないという結論が導かれている。しかしこの調査では、運賃規制が緩和された外国においても、輸送業者が交渉の場でオファーした運賃を指標としているにすぎないことや、荷主が支払う運賃ではなくトラックの用車など下請市場での委託料が集計されているケースがあるなどの問題を含んでいる。わが国の運賃は、輸送ロット、輸送距離などによるコスト差を完全には反映していないとの指摘も多い。このため荷主企業が物流費削減のための工夫を行なう余地が少なく、割高感につながっているのではないかと考えられる。
杉山[1996]は、アプローチと結果の解釈の両面において非常に難しい一連の物流内外価格差論議を、政策的意義を中心に整理している。そして、価格差が存在するとして、非効率、他の貿易財分野での生産性の高さによる要素価格の高さ、為替調整への遅れに原因があるとしている。