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第6章 わが国の港湾産業と港湾管理に関する問題点

 

1. 港湾問題の背後にある事柄

 

(1) 物流空洞化への懸念

 

サービス分野にも国際間での分業や競争があり、わが国の高物流コスト構造によって物流産業の空洞化が招かれるとの危機感が、ここ数年間に生じた。現実には、製造業と同様に、ある地域のある産業がそのまま海外に移転するというよりは、プロダクト・サイクルや経済構造の調整のなかで問題が発生する。阪神・淡路大震災後、神戸港の需要が釜山に移転したかどうかといった目に見える競合関係だけを考えたり、過剰な危機感をもつことは誤りかもしれない。

わが国と東アジア周辺国の間でのトランシップ(貨物継ぎ越し)機能をめぐる港湾間の競争は、これら周辺国が例外なく社会資本追随型発展を遂げ、民間経済投資と港湾整備との間の時間的ギャップがあることによって決定づけられている。台湾と韓国の港湾投資が一段落に向かっているため、今後、当分は中国東北部での港湾投資動向に港湾間競争が左右される。トランシップをいかに評価するかによって、わが国の拠点港湾政策は相当に変化せぎるをえない。トランシップ需要呼び込みの経済効果を点検し、効果が見込まれる場合にはトランシップを取り込むための有効な戦略を探るべきであろう。

何らの策も講じずにいれば、いずれわが国の拠点港湾は、現在ある程度担っている三国間貿易の拠点機能を失うであろう。それにとどまらず、わが国の地方港が釜山港のフィーダー港になれば、わが国の拠点港湾はわが国輸出入貿易の拠点機能も失う可能性がある。そのような過程で、国内物流産業の一層の海外移転が生じる可能性が強い。

 

(2) アジア諸国との物流をめぐる競争

 

アジア諸国は、重工業よりも組立加工型工業を先行させた産業構造を形成した。このためアジア各国は、バルク・カーゴ(バラ積み大宗貨物)貿易の時代をスキップして、定期船による製品、半製品、部品輸送に重点をおいた物流システムを急発展させた。また、国際経済のブロック化に伴い、基幹航路の寄港地間輸送によるアジア域内貿易から独自の定期(フィーダー)船航路網の形成に向かっていった。アジア域内貿易としては、依然として各国から日本への輸出が多いものの、ASEAN諸国間の貿易量と香港・台湾間の海上貿易量が増加している。

香港、シンガポール、釜山港は、外国投資を含めた輸出向け製造業の製品輸出を集中して担っており、

 

 

 

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