5. 国際物流におけるフォワーダーの課題
わが国においては、製品輸入が増加し、従来とは異なった高度で効率的な国際物流サービスが求められるようになった。輸出入逆転により、物流サービスに要求される高品質性と関連した流通加工ニ―ズヘの対応、空コンテナ・ポジショニング問題が生じた。とくにわが国の地方港では、輸出型港湾と輸入型港湾とが分化する傾向にある。このため、空コンテナ輸送コストによって、わが国の物流費水準と(邦人)船社のコストの両方がかさんでいる。
製品の多様化や高品質へのニーズを反映して、物流における単純な場所の移動以外のものが荷主から求められ、その結果、輸送と保管・流通加工サービスの間、あるいはそもそも物流と商流自体の間の分離が難しくなっていった。このようななかでは、物流業態間、あるいは物流業と他産業の間での相互参入を促進し、関連分野間で希少なノウハウを共有・伝播していく必要がある。そのうえで各物流業態は、荷主企業のサプライチェーンの一括責任機能をめぐる競争に、積極的に参加していくべきである。
船社が国際複合一貫輸送サービスに関する製品差別化を十分には果たせないでいる一方で、貨物フォワーダーはもともと資産が少ない分サービス供給が地理的に限定されることがなく、サービスの種類も自由に組み合わせることができる。
わが国の自動車・電機産業の製造拠点が海外に移転され、日本国内のジャスト・イン・タイム(JIT)による生産ラインの動きを国際輸送に組み込む必要があった。そのなかで、船社とフォワーダーとが入り乱れて複合一貫輸送体制を展開していく。高品質高運賃と低品質低運賃の両方のサービスを並列的に供給するような場合には、資産をもたない分サービス供給の柔軟性の高いフォワーダーに優位があった。
定期船船社間でのアライアンスの変化のなかでは、ターミナル施設の規模・範囲の経済性追求が機動力となっている。一方でネットワーク形成のもうひとつの重要な要素となると考えられる荷主側のワン・ストップ・ショッピングの要素は、船社選択にはあまり影響していないように思われる。顧客は、そのような要素を船社ではなく、サード・パーティー。ロジスティクス(TPL)企業などのフォワーダーに求めているものと考えられる。
フォワーダーは、国際物流において非常に重要な役割をもち、米国のNVOCCやTPLなど、各国ごとに異なった産業構造をもっている。物流サービスの効率化・高度化といっても様々な方向性があり、個々の荷主ニーズは極めて多様である。物流システム全体の方向を決定付けるうえで、フォフーダーの役割は極めて大きい。この点が従来の国際物流政策においてみすごされがちであった。
参考文献
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