アライアンスの変化のなかでは、運航、とりわけターミナル施設の規模・範囲の経済性追求が機動力となっている。一方でネットワーク形成のもうひとつの重要な要素となると考えられる荷主側のワン・ストップ・ショッピング(一括業務発注)の要素は、船社選択にはあまり影響していないように思われる。顧客は、そのような要素を、船社ではなくフォワーダーに求めているものと考えられる。現在、国際航空貨物フォワーダーと他の物流業態との間でのアライアンスが活発化しており、遠い将来には船社を巻き込むことがあるかもしれない。
寄港地ごとに母国船社がおり、これが各地域ごとのマーケティングに強みをもつというのが現在のアライアンスがめざしている方向である。しかし、アライアンスが船社のマーケティング機能をどれだけ強化できるかについては、疑わしい面もある。これまで定期船同盟自体が品質・集荷協定としての機能をもちにくかったことからもわかるように、アライアンスもマーケティングの水準や内容を規定し、これをメンバー間で分担するための組織とはいえない面が強い。
4. サード・パーティー・ロジスティクス(TPL)
サード・パーティー・ロジスティクス(TPL)とは、品質向上とコスト節減の両方を前提として、荷主企業から物流を一括して受託することをいう。たとえば、荷主企業が新規事業に進出するときに、荷主企業が本業である製造・研究開発に経営資源を集中するために、物流を一括して外注化する場合が多い。このような委託形態は米国で急激に増加している。その背景には、国際化による輸出入貨物の増加とそれらのパターンの複雑化、規制緩和による運輸業側の効率化、情報通信技術の革新などがある。また、これらの要因のために、高付加価値サービス提供の余地が増大し、市場規模が拡大した。英国においても比較的早くからTPLの展開がみられた一方、欧州大陸とわが国ではTPLの展開があまりすすんでいない。
当該サービスの供給者は、出身事業別にみると2つのタイプがある。ひとつは、トラック・倉庫などの物流関係資産を有していた者が既存の個別サービスに流通加工や情報などの付加価値をつけ、複合サービス化していったもの。もうひとつは、システムに関する提案を主体としたコンサルタント・ベースである。わが国では、前者タイプがいくらかみられるものの、将来的には現在未発達である後者タイプの展開が期待される。わが国の物流企業は、広範囲の海外展開をすすめているわが国の荷主企業に比べて、サービスのカバーする地理的範囲が狭く、世界的範囲での一括受託には至っていない。今後は、フォワーダー間での国際提携がひとつの課題になる。
わが国でTPLが拡大するかどうかは、荷主企業の企業戦略のなかでの物流子会社(インハウス)の位置付けによる部分が大きい。現状では物流子会社を元請とし、外部の物流企業が下講作業を行なう形式での業務外注化が多い。このため、システム提案段階からの完全な外注化には至っていない。