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その理由は、船社が直取(荷主との直接取引)を行ないにくい小口調達・製造物流が多いこと、そして物流業者の海外ロジスティクス展開時期が、製造業のそれに合致したことなどを反映している。わが国メーカーの対アジア直接投資では、製造拠点の内陸展開は進行しておらず、複合一貫サービス供給の余地はあまりない。しかし他方で、FCL貨物の仕立て業務の余地はあるものと考えられる。

歴史の古いシベリア・ランド・ブリッジ(SLB)を除くと、フォワーダーによる複合一貫輸送は、80年代に北米で本格化し、1984年米国新海運法がNVOCC(非船舶運航海上運送人)を正式に認知したことにより事業展開に拍車がかかった。1984年法実効後にインディペンデント・アクション(IA)が多発し、86年前後からは定期船運賃の下落が顕著となり、サービス・コントラクト(SC)も急増する。フォワーダーはSCを盟外船社との間で締結し、同盟船社の複合輸送サービスに対抗することになる。

さらに、わが国の自動車・電機産業の製造拠点が海外に移転され、日本国内のジャスト・イン,タイム(JIT)による生産ラインの動きを国際輸送に組み込む必要があった。しかし、とりわけ自動車産業では、国内生産のようにまったく在庫部品をもたない生産方式を海外において達成することはできず、船社ないしフォフーダーの倉庫と物流ノウハウを活用することになる。そのなかで、船社とフォワーダーとが入り乱れて複合一貫戦略を展開していく。

フォワーダーが提供する複合一貫サービスと、船社の提供するそれとの間には共通性が多い。しかし、高品質高運賃と低品質低運賃の両方のサービスを並列的に供給するような場合には、資産をもたない分サービス供給の柔軟性の高いフォワーダーに優位があった。フォワーダーのなかでも、通関業と倉庫業を起源とする倉庫業者の事業展開がもっとも積極的であった。しかし、倉庫系フォワーダーは、製造物流分野での展開や、情報サービスによる製造物流と製品物流とを一体化したサービスの展開には限界があった。このため倉庫系フォワーダーは、たとえば部品センター事業を展開する場合においても、修理用部品センターに特化しがちであった。

アジア地域向けサービスにおいては、邦人定航船社の進出時期が早かった。たとえば複合輸送といっても港頭地区倉庫どまりの貨物輸送ニーズが多く、船社もフォワーダーに遜色のないサービスを提供している。ただし構内作業を起源とし、こまごまとした製造物流を手懸けている中規模フォワーダーもある。たとえば山九(株)の中国における事業展開は、船社や倉庫系に対して優位に立っている。

船社の物流事業部門、いわゆる船社系フォワーダーも上記のフォワーダーと同様のロジスティクス・サービスを提供し、この場合に海上運送手段として自社船を利用するとは限らない。とはいっても、基本的に船社系フォワーダーは、会社のコア・ビジネスである定期船海運部門に積極的に競争を仕掛ける動機はもたない。このため、事業展開が消極的になる悩みがあった。結局、船社は、北米でのダブル・スタック・トレイン(DST)運行などのハード面の品質を売り物にした複合一貫輸送に主たる優位を発揮することになる。

 

(3) 米国におけるNVOCCの展開

 

荷主に代わってフォワーダーが船社とサービス・コントラクト(SC)を結ぶ場合、そのフォワーダーのことをNVO(非船舶運航者)と呼ぶ。

米国におけるNVOは、当初は貨物混載業者が、港湾労働者によるカルテルを通じての業務配分にとらわれる通称50マイル・ルールから逃れるために設立したことが契機である。その後、米国のNVOは、

 

 

 

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