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2. 複合一貫輸送とNVOCC(非船舶運航海上運送人)

 

(1) 定期船同盟・コンソーシアムの変容と複合一貫輸送サービス

 

1980年代まで、盟外(新興)船社は船舶だけに投資を行なって、海上部分のみをサービス範囲としてきた。海陸複合一貫輸送は、先進国同盟船社の製品差別化のための切札であった。しかし、盟外船社の一部が海上だけのノンフリル・サービスから複合輸送サービスに戦略を変化させていく過程で、市場全体としての船社間サービス格差は縮小していった。邦人船社が北米向けサービスの切札としたダブル・スタック・トレイン(DSTコンテナ2段積み列車)のケースでも、鉄道会社側がDSTブロック・トレインの運行を増加し、専用DSTなしでも、盟外船社は内陸仕向地への複合一貫輸送の供給が可能になっていった。

定期船同盟弱体化のベースには、基幹航路間でスピードの差があった。その理由は、主としてアジア新興船社の投資動向、ならびに米国とECの競争政策上の対応にあった。たとえば、閉鎖型同盟としての結束力の強かった欧州航路では、コンテナ船の共同運航単位である3大コンソーシアムが同盟内の積取シェアを固定してきた。しかし、アジア新興船社の投資による競争力増大、コンソーシアム内・間での調整力の弱まり、さらには需要波動によって、80年代終わり以来、同盟の弱体化が一層すすんだ。

80年代後半には、広域の盟外・盟内船社間協定である航路安定協定が各航路で順次締結された。航路安定協定によリキャパシティーが協定され、運賃は同盟が設定し、スケジュールなどの技術的協定はコンソーシアムによって決定されることになった。しかし実態としては、3つの協定間に密接な関係があるとみることが自然である。

90年代になってオーバー・パナマックス型大型船時代に入り、これらの船舶への投資競争が生じた。サービス水準も、コンテナ船導入時の週1便のウイークリー運航から太平洋航路では週6便程度のデイリー運航が標準化するなど、需要の拡大とともに、必要な投資規模も拡大していった。

 

(2) フォワーダーの複合一貫輸送サービス

 

船社が国際複合一貫輸送サービスに関する製品差別化を十分には果たせないでいる一方で、貨物フォワーダーは、もともと資産が少ない分サービス供給が地理的に限定されることがなく、サービスの種類も自由に組み合わせることができる。そのため貨物フォワーダーは、荷主企業の要請に応じたロジスティクス・システムを構築・販売することができた。

フォワーダーの業務は、輸送に関してみたとき、ソフト・ハード両面における複合一貫輸送サービスの供給、ならびに実運送人との間でサービス・コントラクト(SC)を締結し荷主に低運賃を提供することにある。海上コンテナ輸送に占めるLCL(コンテナ積合せ)貨物の比率は全体として大きくなく、船社は原則としてLCL貨物を受け付けない。そのためフォワーダーは、LCLをFCL(コンテナ貸切)に仕立てるサービスも供給している。原則としてLCLしか発生せず、船社との間でFCLを十分に締結し得る自動車メーカーや大手流通業者などは、フォワーダーを利用しないことが多い。同盟や同盟船社がフォワーダーとの間でSCを締結することは稀である。そのため、フォワーダーによる貨物は盟外船によって海上輸送されることになる。

フォワーダーの関与は、わが国発着の海上コンテナ輸送においては、対アジアで比率が高く、対北米では比率が低い。

 

 

 

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