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第5章 国際貨物フォワーダーの役割の変化

 

1. 国際物流をめぐる環境の変化

 

わが国においては、コンテナ輸送量において輸出が輸入を上回っており、1980年代前半まで両者のギャップが大きかった。そのなかでわが国の物流サービス供給者は、輸出超過を前提とした戦略策定や施設整備を行なってきた。しかし、90年代はじめに輸出入が逆転し、輸入量超過となった。

国際的水平分業の増加によって、わが国においては製品輸入が増加し、生産プロセスのなかに物流が組み込まれるロジスティクス時代を迎えた結果、従来とは異なった高度で効率的な国際物流サービスが求められるようになった。産業内貿易の増加によって、主要輸出品目であった事務用機器や半導体等電子部品、自動車などの製品輸入が、金額と伸び率ともに大きくなっている。

輸出入逆転により、港湾での輸入貨物滞留時間の長さに伴うスペース不足、原材料と比べて製品輸送で要求される高い保管品質、品目の多様性に伴いコンテナ・デバンニング・サービスに要求される高品質性と関連した流通加工ニーズ(仕訳、包装、レッテル貼り、値札付けなど)への対応、空コンテナ・ポジショニング(回送)問題が生じた。このような貿易構造は、ダイナミックな国際分業の結果であり、円安などの短期的動向によっては傾向が大きく変化することはないとみるべきである。

わが国の地方港では、背後地人口と産業構造の差、ならびに韓国向けを中心としたアジア域内定期航路のネットワークの特性のために、輸出型港湾と輸入型港湾とが分化する傾向にある。空コンテナ輸送コストによってわが国の物流費水準と船社(邦人)のコストの両方がかさんでいる。対策としては、たとえば、苫小牧・京浜間で国際空コンテナを内航に用い、農産物輸送を行なっているケースがあるが、内航バースと外航バースとの共用化(第6章参照)や関税制度の運用柔軟化などの工夫を増やしていくことがあげられる。

製品の多様化や高品質へのニーズを反映して、物流における単純な場所の移動以外の事柄が荷主から求められ、その結果、輸送と保管・流通加工サービスの間、あるいはそもそも物流と商流(マーケティング、所有権移転、代金決済など)自体の間の分離が難しくなっていった。

このようななかでは、参入規制によって港湾運送、倉庫、トラックなどの各物流業態のなかにノウハウを閉じこめるのではなく、物流業態間、あるいは物流業と他産業の間での相互参入を促進し、関連分野間で希少なノウハウを共有・伝播していく必要がある。そのうえで各物流業態は、荷主企業のサプライチェーンの一括責任機能をめぐる競争に積極的に参加していくべきである。

 

 

 

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