このように、対アジア物流ではコンテナ貨物の獲得にフォワーダーの関心が向かっているのに対し、対米物流では物としてのコンテナ貨物よりはむしろその他の要因であるシステムとか制度とかのほうにかなりの関心が集まっているとみられる。また、対欧物流におけるフォワーダーの行動は、対アジア物流と対米物流の折衷型となるであろう。
このことを傍証するために、3大仕向地別物流におけるフォワーダーの貨物取扱量がコンテナ貨物の変動に単独で反応する程度を弾性値で求めれば、それは対米物流で3.3、対欧物流で2.8、対アジア物流で2.0である。これを図表4-7で求めた弾力性レベルと比較すると、対米物流で4.8倍、対欧物流で3.0倍、対アジア物流で1.8倍にも達している。しかも、対米物流における弾力性は対アジア物流の1.7倍であり、仕向地別では最も高い。しかしながら、コンテナ貨物量を唯一の説明要因とした対米物流のフォワーダー取扱量の決定係数は0.507にすぎない。これに対し同様の条件のもとで、対ヨ―ロッパ物流と対アジア物流の決定係数は0.866と0.931である。
明らかにコンテナ貨物を唯一の決定因とするフォワーダーの貨物取扱量の仕別地別行動関数では、決定因の説明力にきわめて有意なレベルにおいて差が存在しているとみてよい。コンテナ貨物の説明力は、対米物流では約50%であるのに対し、対アジア物流では85〜90%のレベルにある。したがって対米物流では、物としてのコンテナ貨物に対する関心がフォワーダーの活動の半分を決定しているにすぎず、残りの半分は複合輸送活動をどのように展開しうるかという、システムに関係する要因が重要な役割を果たしていることを確認できる。先に掲げた図表4-7はこのような状況を明確に把握している。対米物流に対して、フォワーダーは複合輸送の質的レベルのあり方に最も強い関心を示しているのである。
このように仕向地別物流に応じて、フォワーダーの行動タイプが分かれる状況は、複合輸送が機能別に大きく2つのタイプに分かれる事情に対応するものである。例えば第1のタイプとは全く新しい複合輸送サービスの創出にかかわり、一方第2のタイプとは従来のサービスを拡充した複合輸送サービスであるといえる10。
第1のタイプは、従来の仕向地と同一ではあるが、利用する輸送手段に変化をもたせて、輸送日数または運賃の面で従来のルートとは異なった内容のサービスを提供することにより、荷主がバリエーションに富んだ輸送メニューを享受することを可能にするものである。具体例としては、シベリアランドブリッジ、アメリカランドブリッジ、ミニランドブリッジやシーアンドエア・サービスをあげることができる。
これに対して第2のタイプは、従来の輸送ルートに内陸の輸送を連結させることによって一貫した輸送サービスを設定し、荷主が輸送手配の利便性を享受できるものである。この第2のタイプの具体例としては、海運企業の行なうIPI、RIPI、欧州航路経由一貫輸送(欧州ゾーンサービス)の他、フォワーダーが行なう、アメリカ、欧州、アジア、オセアニア、中南米などの内陸向けの複合輸送がある。
実証の結果は、対米物流におけるフォワーダーの行動は第1のタイプの複合輸送サービスの構築に向かっており、これに対して対アジア物流においては、第2のタイプのサービスの提供に専念していることを明らかにしている。対欧物流においては、シーアンドエア・サービスに関しては第1のタイプにしたがうけれども、それを除く大半の複合輸送サービスは第2のタイプであるという意味で折衷タイプに属する。しかしそれは実質的には第2のタイプによって支配されているのである。
さて、対米物流における複合輸送戦略は、図表4-7にも示されていたように複合輸送率によって把握されている。この複合輸送率は具体的には、アメリカ西海岸向けコンテナ貨物量をアメリカ仕向けのコンテナ貨物総量で割った割合(単位:%)を示している。分子となるアメリカ西海岸向けコンテナ貨物量は、