これは、85年のプラザ合意に基づく為替調整にしたがって大きく増加した対外直接投資の影響が、ラグを伴って国際物流に現われたためである。この頃より、すでに1984年のアメリカ新海運法の施行による規制緩和のもとで、NVOCCとして活動領域を拡大しつつあったフォワーダーは、国際物流の増加に対応して、荷主の国際ロジスティクス戦略に適合した国際複合輸送サービスを提供することを主要な業務とすることになったのである。
このようなサービスの提供行為は、何もフォワーダー企業に限定されたものではない。海運業の物流事業部門もまた、輸送事業部門とは独立して荷主に対して一貫した国際複合輸送サービスを提供し、フォワーダーと競争する。それは海運企業本来の行為とは相容れないことが多いといわれている。なぜならば、海運企業の物流事業部門が自社の支配下にある船舶を運送手段として選択するとは限らないからである。にもかかわらず物流事業部門がこのような戦略を進めようとするのは、国際物流を支配しうる物流業とは、究極的にはカスタマー・サティスファクションを提供できロジスティクス・サ―ビスを用意できる企業であるとの認識がある7からである。
その意味において、船会社にとってはキャリア業務の発展とフォワーダー業務の発展は、事の両輸として相互補完的なシナジー効果を生むものであることが望ましい。いまは、そこに至るプロセスにある。昨今、話題を提供しているコンテナ船企業の国際的アライアンスとは、ハード面での活動の舞台構築にすぎず、そこにおいて問われているのは、アライアンスの構成メンバーである各船社がどのようなロジスティクス戦略対応行動を展開できるかなのである。キャリア業務とフォワーダー業務は、いまは平行な道であるけれども、いずれ両者は交わるとみるのがよいであろう。その時、物流事業部門がキャリア事業部門を動かしていることも十分にありうるのである。
注5 データの出所は表4-6に同じ。
注6 宮下國生『日本の国際物流システム』、272-281ページ。
注7 宮下國生『国際物流業のサービス差別化戦略―ロジスティクス・システム革新への対応―』、『海事交通研究』、39-74ページ。
2) フォワーダーの対照的な戦略
ところで、先に掲げた図表4-6の日本インターナショナル・フレイト・フォワーダーズ協会(JIFFA)調べによるフォワーダーのコンテナ貨物取扱量のデータには、海運企業の物流事業部門が取り扱った貨物量は含まれていない。そのため、このデータは日本のフォワーダー業の活動をトータルではとらえていない。このような制約のもとで、以下においては、このデータを用いて日本のフォワーダー業の行動を分析しよう。それは、1985〜94年の10年間にわたる、日本の3大仕向地(北米、西欧およびアジア)に対する輸出物流に関係するパネルデータ分析である。
ここで、仕向地別貨物取扱量(単位:1,000フレイト・トン:JIFFA調べ)でとらえた日本のフォワーダーの行動関数は次の6つの説明変数を利用して、図表4-7(次ページ)のようにえられる。すなわち説明変数は、コンテナ貨物の仕向地別物流量(単位:1,000フレイト・トン:日本コンテナ協会調べ)、フォワーダー企業の仕向地別現地法人設立数(JIFFA調べ)、対米航路向け複合輸送率(単位:%,他の仕向地向けデータはゼロ:算定方法は以下参照)、シーアンドエア複合輸送の仕向地別物流量(単位:1,000フレイト・トン:運輸省調べ)、フォワーダーの業務活動を加速させた時間ダミー変数(1991-1994年=1.0,他はゼロ)、対欧物流のダミー変数(対欧物流=1.0,他はゼロ)、および対アジア物流のダミー変数(対アジア物流=1.0,他はゼロ)である8。
注8 JIFFA調べのデータならびに運輸省調べのシーアンドエア複合一貫輸送データは、運輸省総務審議官監修『日本物流年鑑』による。また、日本コンテナ協会調のデータは、同協会編集・発行『コンテナリゼーション』掲載資料より算出。
図表4-7の計測結果によると、フォワーダー業の世界展開の基礎をなすのが仕向航路別に発生するコンテナ貨物量である。