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(3) ロジスティクス戦略展開とTSA戦略の再評価―デマンドサイドとの結合―

 

これまでは、同盟運賃の水準を考察の対象に選択していた。ここでは、日本荷主協会などの調査データに基づきながら、1983〜95年におけるアジア・太平洋東航市場の3品目、オートパーツ、電気製品(テレビ)およびタイヤの品目別運賃決定の特徴を、操業度、集中度、複合輸送および船型の大型化に関する運賃弾力性によってとらえよう(図表4-4参照)。これによって、TSA戦略の効果が品目別に異なっていることが明らかになる。

 

1) オートパーツ物流とTSA戦略効果

図表4-4でとらえたオートパーツ物流では、TSA発足後に操業度の作用が改善し、また集中度の作用もわずかながら好転している。なかでも集中度の作用は、規制緩和後の全体期間において正常なプラスの効果を増加した結果、オートパーツ物流に関する限り、コンテスタブル市場を脱却している。

これに加えて、サービスの差別化戦略である複合輸送が、規制緩和への政策転換の影響を受けることなく、荷主によって継続的に支持されており、これはTSAの発足によっても何ら影響を受けていない。規制緩和後には次第に製造業によるロジスティクス戦略が強化された結果、サービスの差別化戦略によっては対抗しえない事態が現われていると一般に指摘されている。しかし、この計測結果をみる限り、コンテナ船物流業は荷主のロジスティクス戦略展開に十分に対応し、一定の評価を得ていることが明らかになっている。

このように、デマンドサイドに配慮してロジスティクス戦略展開への対応が可能になったことが、東航市場全体としてはコンテスタブル的様相が強いにもかかわらず、オートパーツ物流市場における集中度要因が正常に機能しうる大きな理由であろう。オートパーツ物流にみた個別品日の運賃決定方式は、運賃水準全体の決定方式に極めて類似している。このことは、すでに同盟運賃の決定が品目レベルにおいて独立して有効になされていることを意味している。それは、物流業と荷主との間のコントラクトに基づくロジスティクス思考が浸透している証拠である。

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