以上にみたように、神戸港と大阪港を輸出物流と輸入物流の拠点落として位置づけるならば、いずれのケースにおいても相互に競争状況にあることが目立っている。このような競争を意味のあるものとして、グローバルスタンダード基準の達成を図るためには両港は合体した運営をも視野に入れた一体化への道をさぐる必要があろう。
そのため両港は、国際産業としての港湾コンセプトの確立のウェイトをグローバルな視点に基づいてどこにおくべきかを議論しなければならない。その際、製造業のロジスティクス戦略対応が可能な港湾こそが荷主によって究極的に選択されることを強く認識する必要があろう。グローバルスタンダードでロジスティクス戦略に対応可能な港湾とは、図表3-7(87ページ)に描いたように、物流業が物的・場所的および時間的戦略をベースにおきながら、荷主のためにカスタマー志向の人的戦略を展開できる場であると定義できよう。したがって、神戸港と大阪港は果たしてロジスティクス戦略レベルでみて、どのレベルにおいて戦略的優位を築いているのかを検討せねばならない。その場合、世界の諸港においてすでに採用されている24時間荷役・日曜荷役を適正コストで実施することは、何らの優位を築くものではないとしても、少なくとも劣位状態から脱却するうえで最低限必要なことである。しかし、問題はこのような対応の彼方にある。
すでにみたように、物的・場所的・時間的戦略を超えていま求められている対荷主戦略は、ネットワークの多様化を戦略内容とするものであり、場所的戦略と時間的戦略をカスタマー志向レベルにおいて結合したものである。このようなフォワーダー型のミクロ物流戦略を港湾当局が展開するには、自らも国際物流業としての企業マインドをもって、キャリアと並んで強力なフォワーダーとの間の戦略的連携を模索しなければならないであろう。神戸港の21世紀の発展モデルは、港湾もまた物流のノードとして能動的に物流のネットワークを構築するサード・パーティー・ロジスティクス戦略を展開する姿であるといえよう。それには大幅な規制緩和と地方分権の進展が不可欠であるとしても、常にこのような戦略展開の道を模索する努力を続ける必要がある。