電機については、調達活動はすべてマイナスに作用している。したがって、電機ではすでに調達活動と販売活動が分離され、調達対象が製品ではなくて部品であることがわかる。また、そのなかでも、91年以降については日本よりの調達ネットワークの機能はロジスティクスの全体構成のなかでさらに悪化している。電機の場合には、第三国よりの調達ネットワークの充実を含めたグローバルな対応が求められている。
自動車についても電機のケースと同様に、調達活動がそのまま販売活動を刺激するものではない。しかも調達のネットワークの機能が電機よりもはるかに劣位の状況にある。これは、自動車の調達活動に占める部品の割合が極めて高いうえに、アジアにおけるこの活動が理想的なJIT戦略からかなりずれたレベルにとどまっていることによるものであろう。なかでも日本からの調達活動が最も劣位であるから、現地調達と第三国よりの調達でこれを補っていくことが今後の重要な課題である。このように自動車の調達ネットワークの作用は、すべての調達活動をロジスティクスのプラスの効果と結合している繊維業とは全く対照的なレベルにある。アジアにおける自動車産業がJITを目指すロジスティクス戦略を構築するには、なおかなりの努力を必要とするであろう。
注12 データソースは注5に同じ。
(2) アジア現地法人の利益率の減少
すでに図表3-3(81ページ)においてみたように、アジアに進出した日本の製造業の現地法人の売上高経常利益率は次第に低下してきていた。その大きな原因は、1991年以降におけるASEANとNIESにおける利益率に及ぼす調達活動の弾力性と販売活動の弾力性が、ともにプラスからマイナスに転じたことにある。図表3-913(次ページ)にみるように、日本のASEAN現地法人とNIES現地法人の一般機械に関する事例ではあるけれども、その調達活動はあらゆる調達ソースにおいて、また販売活動はあらゆる販売先において、利益率への作用を著しく悪化させているのである。アジア現地法人のロジスティクス活動は、まさに重大な転換期にさしかかりつつある。それはたとえていえば、農業における粗放的生産の時代から集約的生産の時代への転換が要請されたのと全く同じ状況にある。肥沃な土地を求めて移動して、耕せるだけの土地を耕し尽くしてきたというのが粗放的生産にたとえられるアジア現地法人のロジスティクスの戦略ステージであった。このような生産方法に限界がきているということは、今後は特定の決められた場所においてロジスティクスの質を高める集約的生産の実行が求められているのである。
アジア現地法人の利益率の低迷とは対照的に、ヨーロッパ(EU)現地法人とアメリカ(US)現地法人の利益率は回復の途上にある。もっともEU現地法人については、繊維・一般機械・電機・自動車の4業種の調達活動は、91年以降において著しく悪化しているけれども、販売活動のほうがこの悪化をカバーするように改善している。EU現地法人のロジスティクス活動のもつプラス・マイナスの両面の効果が利益率に反映された結果、利益率の回復のテンポはかなり緩慢である。
これに対して、アメリカ現地法人の利益率の回復は極めて著しい状況にある。その原因を電機と自動車の2業種について探ると、いずれの業種においても共通して、第三国向け販売活動の機能が利益率の向上に貢献しているとみられる。調達活動全体ならびに第三国向けを除く販売活動の機能には、何らの変化も生じていないからである。80年代におけるアメリカ現地法人のロジスティクス戦略の特徴が、