注3 データは日本コンテナ協会『コンテナリゼーション』、経済企画庁調査局編『経済要覧』、日本銀行国際局『国際比較統計』、同『外国経済統計年報』による。
図表3-1をみると、例えば中国への輸出の場合、日本の対中輸出物流の約30%は中国のGDPによって説明されているが、なかでも「その他の要因」がそれを上まわる説明力をもっている。その他の要因には、アメリカやヨーロッパからの中国への投資、為替相場、物価、経済的あるいは人的ネットワークなどが含まれる。特に華僑との関係が深い中国・香港・シンガポールにおいて、このその他の要因の作用が大きく支配しているのは興味ある現象である。しかし、これに対して日本の直接投資は、これら5カ国・地域のいずれにおいても、日本からの物流量の発生を期待したほどには喚起していない。直接投資の影響力の大きなインドネシアやタイでも、その説明力は20〜30%のレベルにある。もっとも日本の直接投資はアジア各国のGDPを成長させるため、直接投資の累積的作用はGDPによって吸収されているとみられる。したがって、このように直接投資の作用をGDPの作用と分離して把握することに問題がないわけではない。
注4 神戸港の対アジア物流データは、神戸市港湾整備局『神戸港大観』による。
次に図表3-2(次ページ)に注目しよう。これは、神戸港をわが国の代表的港として取り上げ、神戸港をベースとする日本の輸出物流が日本の対アジア各国向け直接投資、アジア各国の経済成長および為替相場率、コンテナ化率、および神戸の港湾物流集中度によってどのような影響を受けているのかを86〜95年にわたって弾力性によってとらえたものである4。
弾力性を求めるための基本的な関数型は、神戸港の対アジア各国向け輸出物流=f(日本のアジア各国向け直接投資;アジア各国の経済成長;日本とアジア各国の為替相場率;神戸港のコンテナ化率;神戸の港湾物流集中度)である。同式を指数関数型に特定したうえで、両辺の対数をとり、9カ国・地域の10年にわたるパネル分析を展開している。その基準となっているのが、韓国に対する5つの要因の弾力性である。他の8カ国の弾力性については韓国の弾力性に、求められた調整値を加減した調整済の値のみを示している。韓国の弾力性についてのみt値の基準を添付しているのはそのためである。なお、
為替相場率=円の対米ドル相場 /アジア通過の対米ドル相場
であり、円安(すなわち為替相場率の上昇)は日本の輸出を増加するから、この要因の本来の符号はプラスである。コンテナ化率は神戸港のコンテナ貨物の取扱比率(%)、神戸の港湾物流集中度は、8大港のコンテナ貨物の輸出物流に占める神戸港の割合(%)をとらえている。