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第3章 企業ロジスティクス戦略のグローバル展開

 

1. アジアの貿易と物流

 

(1) アジアの貿易と物流

 

わが国の米国・EU・アジアに対する貿易額の推移1をみると、1995年の日本の対アジア貿易額は85年の約3倍に達しているのみならず、日本の米国とEUに対する貿易額の合計、約3,300億ドルをわずかではあるが上まわる額に達している。同じ期間に日本の対EU貿易と対米貿易も、それぞれ約3倍と約2.2倍に増加してはいるが、95年の各貿易額は、対アジア貿易を100とすれば、それぞれ38と55のレベルにある。このように貿易の成長率とシェアの両面において、日本の対アジア貿易は特異な重要性をもつに至ったのである。

一方、世界の製品物流量に占めるアジア物流の重要性をTEU(20フィート型コンテナ換算単位)によって測定しよう。ちなみにコンテナ船に積載されるコンテナ1個の長さは現在は40フィート型が主流であるが、当初は20フィート型が使われていたため、TEUがコンテナ船で輸送される貨物(主として製品)の取扱量を測定する標準的単位となっている。これを利用すれば、世界のコンテナ貨物取扱量2は、85〜94年の10年間で約5,600万TEUから約1億2,500万TEUへと約2倍に増加し、このなかで東アジア地域のコンテナ貨物取扱量の占めるシェアは約29%から約43%へと約1.5倍に拡大した。つまり東アジア地区のコンテナ貨物取扱量はこの10年間のうちに約3倍にも増加したのである。ここにいう東アジア地域とは、日本と中国にNIES4カ国・地域(韓国・台湾・香港・シンガポール)とASEAN4カ国(マレーシア・タイ・インドネシア・フィリピン)を加えた10カ国・地域である。

 

注1 日本関税協会『外国貿易概況』による。

注2 運輸省海上交通局『平成8年度 日本海運の現状』。データは、Containerization International Year Book 1987/1996による。

 

(2) アジア物流の発展要因と神戸港

 

このように日本の貿易相手国としてのアジアの地位の向上とアジア地域の物流量の飛躍的増大こそは、アジア経済の発展を象徴するマクロ的特徴である。ここで日本の対アジア輸出物流に注目して、この物流量がアジア各国のGDP、日本の対アジア直接投資、およびその他の要因によってどの程度説明されるのかを示したのが図表3-13である。ここでは日本の輸出相手国として中国・香港・シンガポール・インドネシア・タイの5カ国・地域を取り上げ、1986〜95年の10年間における3要因の説明力をパーセント表示している。

 

 

 

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