輸出における完成品や部資材物流の航空輸送は、図表2-13のとおり、海上貨物が減少する一方で、航空は92年度以降増加傾向にある。96年度の出荷量は2万1,200トン(シーアンドエア1,400トン含む)であり、その内訳は、?@約6割がインダストリー営業本部などが扱う製造用部材、2割強が完成品、?Bl割強がA社グループ企業の海外工場向け部資材となっている。仕向地比率は、?@欧州31%、?A北米30%、?Bアジア28%という状況で、ここ1〜2年欧州が増加している。
航空運賃の低下や商品寿命の短さに伴う工場ラインの速い切り替えに対応するため、電子部品、および運賃負担力のあるビデオカメラなどの完成品が航空輸送に代わっている。
一方、96年度推計輸入コンテナ量は約1万FEUであり、その内訳は、?@海外工場からの逆輸入製品が約8,500FEU、?Aブラウン管など国内工場向け部資材が約1,000FEU、?B缶詰やペットフードなど輸入一般商材が約500FEUである。このうち、持帰り輸入の輸入元構成は、?@約6割がマレーシア、シンガポール、?A3割弱が中国(香港)、台湾、?Bl割強が米国などとなっている。輸入製品はエアコン、扇風機、テレビ、AV(オーディオ・ビデオ)など。国内工場向け部資材は、物量面では米国からのブラウン管が大半で、一般商材はイタリア、オーストラリア、アメリカ。このほか非コンテナ貨物として主にアルミ地金などを約20万トン輸入している。
国内揚地港は、阪神、京浜、博多、名古屋、清水の順に多く、苫小牧、新潟、那覇も利用することがある。
日本向け持帰り輸入製品は現在、多くが国内物流拠点に配送しているが、国内物流費を圧縮し、市場競争力を高めるため、量販店直送の拡大を指向している。海上運賃に比べて圧倒的に国内輸送費が高いことから、顧客先への直送体制の拡大など、より効率的な輸入物流を構築するため、発地側での荷傷みのチェックや定時性を含め、さらに低コストで高品質なサービスを船社へ求めている。
一方、96年度の輸入航空貨物量は2,500トンである。持帰り輸入と一般商材の貨物比率は半々となっている。逆輸入ではマレーシアからのコンピュータ用モーター、米国や台湾、シンガポールからの半導体が多い。一般商材は精密機械、半導体、航空機用アビオニクスなどである。フォワーダー起用に際しては、?@フライト情報の迅速・正確な提供、?A荷傷みなどの適切な貨物チェック、?B競争力あるレート、などを優先基準としている。
(4) 物流ニーズについて
1) キャリア・フォワーダーの起用の視点
高度成長期においては、日本から輸出される大量貨物を背景に、日本発中心の起用策が通用していた。しかし、1996年度実績では日本からの輸出は、日本および海外物流拠点からの全出荷量の5割弱になった。今後も日本からの輸出量の相対的な低下は否めない。
そこで、船社の起用策も日本発中心からグローバルな視点へと発想転換が必要になってくる。日本のサービスに力点をおいて判断するのではなく、日本以外の発地国や着地国でのサービス体制を重視した起用策になってくる。また、物流コストにおいても日本の輸出量だけでなく、世界的な物量をベ―スに、グローバルにコスト合理化に対応できる船社かどうかが重要な要素となっている。
このようなトレード変化とグローバル物量を踏まえ、長期にわたってパートナーとなる船社との関係が再構築されようとしている。その際、高品質サービスを第一義としながらも運賃については、市場水準を基準にボリュームを反映した運賃を提供できる船社が起用されることとなる。
2) 地方港について
輸入製品については、できるだけ消費地に近い港で荷揚げし、顧客倉庫への直送を拡大する方向で取り組んでいる。国内輸送コストを圧縮し、商品競争力を高めようとしているため、地方港のコンテナ化はメーカーとしては前向きな評価にある8。消費地直送を進めるには、海外での品質検査体制の充実や海外物流拠点でのCFS貨物の混載FCL化推進が必要である。
ただ現状では、日本出し出荷貨物の9割強が主要5大港で占められている(東京31.5%、横浜15%、名古屋4.5%、大阪12.5%、神戸30%)。また、部資材関係は、阪神46%、名古屋33%、京浜18%で、その他が清水、などである。完成品に比べ名古屋積みのシェアが高い。
一方、アジア出しの主要利用港はポートケラン、シンガポール、香港、基隆、高雄、マニラ、パシールグラン、大連、上海、厦門、の10港である。主要揚地港はアメリカがロサンゼルス、ロングビーチなどで、欧州がハンブルグ、ロッテルダム、サザンプトンなどである。なお、アメリカでの拠点DC体制は現在、3地域5拠点で、?@東部がセコーカス、ボルチモア、アトランタ、?A中部がエルジン、?B西部がサイプレスとなっている。
注8 この点に関して、異なる見解も存在する。津守貴之『東アジア物流体制と日本経済』では、アジア域内のコンテナ物流の中心は日本ではなく、日本以外の東アジア域の諸国・地域に移転しているとの認識に立って、地方港の「国際化」が地方圏の産業振興、とりわけ地場中小企業のためのそれを意味しないことを指摘している。