また、グローバルに事業展開するうえで、より動きやすくするための情報インフラとして、「グローバル・インフォメーション・シェアリング」(GIS)の導入を進めている。各国の販売・製造会社の仕入れ/販売/在庫の計画。実績から、全取引の受発注、また受発注から船積みまでの進捗情報などを、これら業務に関与するすべての人間がいつでも、どこでも知りたい情報を入手できるシステムである。日常業務のなかでインプットされたデータをサーバーで加工・プールする形である。たとえば、販売側は納期情報、逆に製造側は商品の売行き情報を入手できるといった国際取引に関するあらゆる情報を共有化できるシステムである。
なお、このA社では、2000年度までに連結ベースで約1兆円に達する総在庫を半減する、との情報が98年1月に報道された。確かに、供給過剰にある世界の家電業界では余分な在庫が値崩れの引き金になり、各社の経営圧迫要因となっていることは否めない。前述したようなロジスティクス施策に基づき、2000年までに全世界の製造・販売拠点で日々の生産・販売。在庫の情報を閲覧できるGISシステムを稼動し、各拠点の受発注を電子化することによってこの目標を達成するものとみられる。
(3) グローバル物流の現状
3国間を含めた製品、資材設備輸出、輸入の貨物別動向と当面の取り組み方針を概観する。
1996年度、日本から出荷した海上貨物量は図表2-13のとおり164万立方メートルである。推計コンテナ量は3万FEU強。仕向地構成は、?@米州26%、?A中国26%、?B欧州22%、?Cアジア大洋州20%、?D中近東など6%となっている。全貨物量の約7割が完成品で、それ以外はA社の海外工場向け資材・設備などとなっている。完成品では近年、携帯電話機などの情報・産業機器が増加しているが、日本発の貨物は横ばいもしくは減少傾向にある。その一方で、アジア出し/北米向けやアジア域内間物流が着実に増加している。
アジア出し/北米向けは推計8,000FEU弱である。欧州向け貨物の出荷元構成は日本出しが55%、アジア出しが45%という状況である。アジア出し/北米向けの比率は同盟船9割、盟外船1割。94年と比較してほぼ変化がない。この要因としては、同盟船と盟外船の運賃格差が縮小したためであると指摘されている。
一方、日本からの海上輸送による海外工場向け部資材。設備貨物は全輸出の約1割強を示している。中国を含めたアジア大洋州の生産拠点向けが74%、米州(中南米含む)向けが16%である。A社では国際部品調達の最適化を図るため、本社資材センターグローバル推進部が全世界の工場に競争力ある商品生産に向けた資材情報を提供している。
アジア向けの場合、現地調達率の増加に伴って日本からの供給率は2割弱程度にまで減少している。出荷は海上輸送を基本としているが、半導体などのハイバリュー貨物はリードタイムの短縮と航空運賃の低下で空輸が増加傾向にある。また、アジア域内では生産の水平分業に伴う物流が増加傾向にある。
資材・設備輸出の課題としては、完成品の価格競争力に直接大きな影響を及ぼすため、コスト意識に徹する必要性がある。このため、物流コストの徹底した合理化を進めている。
船社の起用にあたっての考え方としては、サービスと運賃を一体的にとらえ荷主の物流ポリシーに理解・協力があることを前提としたうえで、?@着地側の内陸輸送まで含めた総トランジット・タイム、?A同輸送のトータル運賃水準、?B同盟内での発言力、?C貨物輸送システムなどを選定基準としている。