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2) 今後の展望と課題

世界の電子・電機市場は、今後もパソコン、通信機などの情報関連機器を中心として拡大傾向が続くと見込まれる。さらに、これに伴い半導体、液晶などのデバイス市場も高成長が続くこととなる。こうしたなか、わが国の電子・電機産業は、その高い技術力を背景に国際市場において高い競争力を維持しうる力は十分にある。ただし、そのためにはいくつかの克服すべき課題が存在することも事実である。

第1に従来日系メーカーが得意としてきた家電製品の需要が、とくに先進国市場を中心に頭打ちになっていることである。これは、先進国市場において普及率が飽和し、需要が更新需要中心になっている一方で、更新需要を促進する新製品の開発にも閉塞感が出てきていることによる。このようななか、日系メーカーとしては、今後も順調な拡大が期待できるアジアを中心としたエマージング・マーケットの需要の確保が重要となる一方で、近年需要が急速に拡大しているパソコンと従来型家電製品の融合化の動きに注視する必要があろう。これは情報家電市場と呼ばれる分野で、パソコン市場において米国メーカーに遅れをとった日系メーカーとしては、巻き返しを図るチャンスであるとともに、家電市場拡大に向けた新たな活路として製品開発、市場開拓に注力する必要がある。

第2に、海外現地生産の拡大により、電子・電機産業の国際生産に空洞化の懸念が生じつつあることがあげられる。電子・電機メーカーは、近年円高による輸出競争力の低下を受け、AV機器など完成品の組立工程を中心に東南アジアなどへの進出をますます活発化させている。今後のアジア経済の発展を考えると、家電産業においても完成品の国内生産は減少し、当該分野での雇用確保が難しくなってきている。また、国内生産の空洞化が進展すると、国内での生産技術面での停滞も懸念される。そこで、日系メーカーとしては、コスト的に国際生産に耐えうる高付加価値製品の創出が常に必要とされる。

第3に、日系メーカーの新たな競合勢力として、韓国、台湾を中心としたアジアメーカーが急速に力をつけてきていることである。確かにアジア経済は最近、厳しい状況に陥っているとの見方もある。とくに韓国については、IMFはじめわが国からも支援を受けることになるなど深刻な状況にあるため、短期的な経済再生は難しいとみられる。しかし、中長期的な視点に立つとアジア経済全体は現在、調整局面に直面しているとのとらえ方もでき、その潜在的な経済成長力が大きく減退したとは認められない。したがって、たとえば半導体の主力製品の一つであるDRAM市場では、前述のとおり韓国メ―カーが日本メーカーに迫るシェアを獲得しているし、パソコン市場では台湾メーカーの台頭が著しい。日系メーカーはこれらの勢力に対抗すべく、今後もグローバルな生産展開により、コスト競争力を維持すると同時に、先端技術分野での開発力の優位性を維持し続ける必要がある。

第4に、半導体のデバイス分野での技術革新の進展により、設備投資、研究開発投資が巨額化している点である。さらに韓国、台湾企業の参入により競争が激化していることから、各メーカー間の設備投資競争は熾烈を極めている。今後は、設備の効率的な利用を促進するとともに、メーカー間の技術提携、生産提携などにより投資リスクを低減するなどの方策が必要とされる。

 

 

 

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