3. 荷主としての家電企業(産業)の物流ニーズに関する調査
A社をモデルケースとして
(1) 海外物流戦略の概要
A社7では国際物流業務を担当するのは、海外業務本部となっている。同本部の主な業務は、海外製造会社の製品を日本に持ち帰る逆輸入、および一般商材の輸入物流を含む営業部門の国際輸出入物流、ならびに海外物流支援と6地域本部(北米、中南米、欧州、CIS中近東アフリカ、アジア大洋州、中国)の経理業務である。6地域本部は管轄する海外販社などへの販売と経営指導などが主な仕事となっている。国際商事本部は、A社国内外の生産用部材のほか、缶詰などの輸入一般商材を扱う。
1996年度輸出の海上/航空輸送状況は図表2-12(次ページ)のとおりである。支払運賃はほぼ拮抗状態で、着実に航空輸送の比率が増加している。この原因として航空運賃が低下し、かつ時間短縮ニーズの高まりによって電子部品などインダストリー系の商品の航空輸送が増加しているためである。
海外業務本部のロジスティクス戦略は、「スケールメリット」をキーワードにした「グローバル物流コントロール体制」の構築にある。96年度に世界中へ出荷した海上貨物量は推計6万数千FEUに達する。輸出は図表2-13(次ページ)のとおり。91年度の226万立方メートルをピークに減少傾向にあるものの、おそらく、電機業界では世界最大級である。A社としては、このグローバル物量を背景にメガ・キャリアとの新たなパートナーシップを構築し、ローコストでより効率的なグローバル物流を確立する考えである。日本起点の輸出入航空貨物量の推移は、図表2-13・2-14(次ページ)のとおり。96年度は輸出入で計2万3,700トンにのぼる。海上貨物だけでなく航空においても巨大な物量を誇る。A社では今後、航空輸送においても新たな船社起用策と同様にパートナーの再構築を検討する。
注7 実際にヒアリングを行った企業のうち、代表的なケースと考えられる企業(この会社をA社とする)について、国際物流業務の組織体制を簡単にサーベイし、家電産業の新たな海外ロジスティックス戦略を探る。
(2) 重点施策
A社におけるロジスティクスの重点施策は、次の3点にまとめられる。
第1は海外生産の拡大に対応し、海外製造会社向けの生産用部資材・設備を安く、効率的に供給する。商品のコスト競争力のアップに寄与できる体制づくりを柱として、グループ各社の経営に貢献する物流戦略を推進する。
第2に「グローバル物流コントロール体制」を確立し、より大きな物流コストの合理化を図ることである。これまで5つの海外物流拠点をさらに充実強化し、日本を含む6拠点を中心としたグローバル物流を掌握し、このスケールメリットを追求できる「グローバル物流コントロール体制」を確立して最大限のコスト合理化をめざそうとしている。
第3に海外業務本部のスリム化とコストの限りない効率化、および行政機能強化の追求である。輸出を中心とした船積み実務などは従来から情報システム化を導入し、ルーチン化業務は子会社にアウトソーシングしているが、さらに外部委託できるものは行ない、組織をスリム化していく。同時にBPR(ビジネス・プロセス・エンジエアリング)に取り組み、製造事業への物流支援強化および物流コスト削減を中心とした物流行政管理体制の強化を図る。