(2) 家電産業の特色と今後の課題
1) 産業特色と企業収支
電子・電機産業の特色としては、第1にあげられるのが、生産現場において、資本集約的な側面と労働集約的な側面をあわせ持っているという点である。すなわち、半導体、液晶をはじめとするデバイス生産においては、高額な製造設備を利用した極めて資本集約的な生産が行なわれている。さらに、この分野では技術革新の波が速いため、研究開発費も膨らむ一方である。これに対して、テレビ、VTR、パソコンなどの完成品の組立工程においては、近年、機械の導入による自動化が進展しているものの、その作業の複雑さから人的労働に頼らなければならない部分が多く残っている。
現在、電子・電機産業に参入しているメーカーは次のような5つのグループに大別できる。すなわち、?@総合電機メーカー、?A家電メーカー、?B通信機・コンピュータメーカー、?C電子部品メーカー、?D重電メーカーである。ただし、近年の家電メーカーは産業用機器を手がける一方で、電子部品のなかでもICなどのキーデバイスはその企業の戦略製品という位置づけから、大部分はそれぞれのグループの大手機器メーカーが生産している。
バブル崩壊以降低迷した企業収益は、93年度以降回復基調にある。96年度には、半導体市況の暴落により減益を余儀なくされるが、97年度については、再び増益に転ずる見込みであり、緩やかながら回復傾向にあるという見方が当初強かった。この要因としては、?@円高による輸出採算の悪化を受けた積極的な海外生産展開、?A固定費の増大傾向の抑制、?B半導体等の高収益部門の成長などがあげられよう。しかしながら、95年度の収益も直近のピークであった90年度の60%の水準にすぎず、絶対額での収益力の回復は遅れている。これは、?@価格破壊のなかで家電部門の収益性が低迷していること、?A半導体のデバイス部門においては、設備投資・研究開発投資が巨額化する傾向にあり、他産業に比較して固定費負担は高いレベルにあること、さらに、?B国際市場において欧米メーカーばかりでなく、韓国、台湾メーカーとの競争激化により収益環境は厳しさを増していること、などの要因によるものである。
しかし、?@97年4月消費税率の引上げによる個人消費の予想以上の落ち込み、?A大手金融機関をはじめとする大企業の相次ぐ倒産により景気の先行き不透明感が非常に増したこと、?B自己資本比率を引き上げるための銀行の貸し渋り、急激な債権回収が中小企業はじめ産業活動の足を引っ張る格好となっていること、さらに、?Cタイ通貨の大幅切下げを発端とするアジア経済の大きな落ち込み、などにより家電製品に対する内外の需要が低迷しており、各社とも97年度の見込みについて下方修正を余儀なくされているのが現状である。