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このような製販同盟、製販統合の動きは、サプライチェーンマネジメントが組織間の関係に影響を及ぼした例として注目される。製販同盟、製販統合は、製造部門と販売部門が情報を共有することにより、市場変化の対応を迅速に行なうとする点に特徴がある。その意味で、消費者重視という最近の流れに沿った動きといえよう。

 

4) 国際比較調査にみる日本企業の特徴

アメリカで始まったサプライチェーンマネジメントは、日本をはじめ多くの国で導入されている。しかしながら、日本の流通系列にみられるように、それぞれの国に特有な流通経路が形成されており、サプライチェーンマネジメントの導入でも国ごとの特徴がみられるはずである。

このような観点から、E.A.Morash、S.R.Clintonによるサプライチェーンマネジメント国際比較研究8により、日本企業のサプライチェーンマネジメントに対する取り組み、考え方の特徴を紹介する。ただし、サプライチェーンマネジメント概念の定着度は、その起源であるアメリカとそれを応用した日本では異なっており、単純に比較することは難しい面があることに注意する必要がある。

同研究では、アメリカ、日本、韓国、オーストラリアの4カ国におけるサプライチェーンマネジメントの国際比較を行なうため、アメリカロジスティクス協会(CLM)と各国のこれに相当する団体に参加している荷主企業に対しアンケート調査を実施した。同研究では、アメリカ、日本、韓国、オーストラリアの4カ国の企業9,634社に対し、アンケート調査を行なっている。回答率は、20.1%であり、各国の回答社数は、アメリカ1,223社、日本324社、韓国124社、オーストラリア280社である。質問票は、英語で作成されたものを、各国語に翻訳したものを用いている。

 

注8 Morash,E.A.,Clinton,S.R.,Transportation Journal

 

?@組織内部のサプライチェーンの統合

組織間の連携を行なうためには、サプライチェーンマネジメントに参加する各組織の内部でサプライチェーンに関連する部署を統合する必要がある。この点については、4カ国とも組織内部で関連する部署を統合する必要性を回答しているが、なかでも韓国はその必要性を強調している。

ロジスティクスに関する意思決定の組織内調整を集権的に行なうべきかどうかという質問に対して、韓国は他の3国と比べてあてはまると回答する企業の比率が多い。

日本企業は、韓国、オーストラリア、アメリカと比べて、集権的に行なうべきとする割合が低いという結果が示されている。この結果は、すでに日本では集権的に内部統合されているため、あまり強く必要性を感じていないのか、単純にサプライチェーンマネジメントの必要性があまり認識されていないのか、解釈に苦しむところである。

 

?Aサプライチェーンの組織間統合:オペレーショナルな計画など

日本企業の特徴は、サプライチェーンの組織間統合でオペレーショナルな計画などを重視することに現われている。すなわち、日本では、実行計画や物理的なプロセス改善を通じて、組織間統合を図ろうとする企業の比率が高く、ジャスト・イン・タイムを重視する企業が多いことが示される。

組織間統合のうちオペレーショナルな計画などに関連した項目は、オペレーショナルな計画、伝統的なチャネルパワー、組織への忠実度から構成されている。

オペレーショナルな計画は、組織間の業務改善計画でオペレーショナルな計画をどの程度重視するか、ジャスト・イン・タイムの需要に対してオペレーショナルな計画をどの程度重視するかなどを質問している。他の国もこのオペレーショナルな計画を重視することには変わりないが、とくに日本企業は非常に重視する企業が多いことが示されている。また、サプライチェーンマネジメントのなかでも輸送と倉庫の機能を重視したQRシステムを重視していることも示されている。

 

 

 

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